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神様のカルテ (小学館文庫)

神様のカルテ (小学館文庫)

夏川 草介

この本の所有者

69人が登録
504回参照
2011年8月6日に更新

書籍情報

ページ数:
256ページ
参照数:
504回
更新日:
2011/08/06
所有者:
まい まいさん

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📊 読書進捗 (まいさんの記録)

2011/08/06 256ページまで
2011/08/06 236ページまで
2011/08/06 174ページまで
2011/08/05 164ページまで
2011/08/05 144ページまで
2011/08/05 138ページまで
2011/08/01 59ページまで
2011/07/31 55ページまで
2011/07/30 46ページまで
2011/07/30 27ページまで
2011/07/29 11ページまで

📝 レビュー (まいさんのレビュー)

評価:
5/5
レビュー:
世の中というものは、周り続けて、自分がどっちを向いているのかわからなくなっているのが、いまの世間というものだ。こういう時、自分だけ回るのをやめると世人からは変人扱いされる。別に変人扱いされたところで私はなんら痛痒を感じないが、細君には迷惑を掛けたくないので、とりあえず一緒に回ることにしている。きっと世のほとんどの人間がそうやってぐるぐるぐるぐるやっている。いろんな不満や不安を抱えながら、ぐるぐるぐるぐるやっている。

しかし、やはり人にはそれぞれの役割といったものがあるのだろう。たとえ変人呼ばわりされたところで、私にはこの生き方しかできなかったのである。

五里霧中とはこのことか。人生とは晴れぬ霧に包まれた手探りの放浪にほかならぬ。

智に働けば角がたつ、情に棹させば流される。

意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。

まことに、人の世は住みにくい。

「世人がなにをぼやこうが、我々はひとつ確かなことを知っている。あそこに住まう人々が皆一様に、懸命に生きようとしている人々だということだ。無論、我々も含めてな」
御嶽荘は不思議な空間である。まるで世の中に適合しきれなくなった人々が、さまよい歩いた先に見つけた駆け込み寺のような様相が確かにある。だが、寺と大きく違うことは、訪れた人々はけして世を儚んで出家などせぬということだ。彼らは再び世の中という大海原に向けて船を出す。難破を恐れて孤島に閉じこもる人々ではない。生きにくい世の中に自分の居場所を見つけるために何度でも旅立つ人々だ。そういう不器用な人々を奇人と噂するのは、生きることの難しさを実感したことのない凡愚の妄言である。
誰もが皆、誇り高き路傍の人なのだ。
支離滅裂
人は機械ではないのだ
すいません、ドクトル、私は…
かまわぬ。生きている。そこに意義がある。
食事が終わって箸をおいた時、あの人は言ったんです。すまんなって。たった一言がびっくりするくらい嬉しくて、私はもう何度も頷いたものです。この人の生き方は間違っていないんだって。ついていこうって。

今はまだ、私の人生の夜明け前なのだ。
明けない夜はない。止まない雨はない。そういうことなのだ、学士殿。

でもきっと、見てくることは大事なことなのでしょう?一度見て、それから決めればよいではありませんか。

ハルはいつでも前向きだな。
人生の岐路というものは、いつでも急に目の前に現れて人を動揺させる。

いつまでも住み続ける環境ではなかろうが、だからと言って自分が何をなすべきか結論は出ず、いまだ前途は茫洋たる霧に包まれて判然としない。

やれやれ。

ひとりが全部できる必要はないでしょう。人には向き不向きというものがあるのですから。

ただでさえ医者が足りねえご時世だ。それがこぞって最先端医療に打ち込んだら、誰が下町の年寄りたちを看取るんだ?俺たちはそれをやっている。

現代の驚異的な技術を用いて全ての医療を行えば、止まりかけた心臓も一時的には動くであろう、呼吸が止まっていても酸素を投与できるであろう。しかしそれでどうするのか?心臓マッサージで肋骨は全部折れ、人工呼吸の機械で無理やり酸素を送り込み、数々のチューブにつないで、回復する見込みがない人に、大量の薬剤を投与する。結果、心臓が動いている期間が数日のびることはあるかもしれない。だが、それが本当に生きるということなのか?孤独な病室で、機械まみれで呼吸を続けるということは悲惨である。
命の意味を考えもせず、ただ感情的に全ての治療をと叫ぶのはエゴである。

病むということは、とても孤独なことです。病の人にとって、もっとも辛いことは孤独であることです。

まあいい。これが私の選んだ道というものだ。人には向き不向きというものがある。患者たちの笑顔を見ているのが楽しいと感じるのであるから、私にはこういう医療が向いているのであろう。とりあえず萎れそうになる我が心にそう言い聞かせてみた。
私は唐突に確信した。
これでよいのだ。
思えば人生なるものは、特別な技術やら才能やらをもって魔法のように作り出すものではない。
人が生まれ落ちたその足元の土くれの下に、最初から埋もれているものではなかろうか。
私にとって、それは最先端の医療を学ぶことではなく、安曇さんのような人々と時間を過ごすことであり、ひいては、細君とともにこの歩みを続けることだ。
当たり前のように、ずっと以前から結論はそこにあったのだ。
迷うた時にこそ立ち止まり、足下に槌をふるえばよい。さすれば、自然そこから大切なものどもが顔を出す。
惑い苦悩した時にこそ、立ち止まらねばならぬ。
川を堰き止め山を切り崩して猛進するだけが人生ではない。そこかしこに埋もれたる大切なものどもを、丁寧に丁寧に掘り起こしてゆくその積み重ねもまた人生なのだ。
長い人生だ。いずれまた道を見失い戸惑う時もくるであろう。右往左往して駆け回り、瑣事にとらわれて懊悩することもあるであろう。そんな時こそ、立ち止まり胸を張って槌を振り上げよ!足下の土に無心に鑿をくわえよ!慌てずともよい。
答えはいつもそこにある。

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