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ガソリン生活

ガソリン生活

伊坂幸太郎

この本の所有者

24人が登録
164回参照
2013年7月8日に更新

書籍情報

ページ数:
413ページ
参照数:
164回
更新日:
2013/07/08

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📝 レビュー (あおみさんのレビュー)

評価:
5/5
レビュー:
読書を最大の趣味としてから多くの小説を読んできたが、読んでいてこんなにも楽しい気持ちになれた小説はこれが初めてだ。
これまでにも愉快な登場人物が出てきて彼らの会話がユニークであったり、彼らを一人の人間として憧れたりだという経験は幾つかあった。
しかし読んでいてこんなに「楽しい」と純粋に思えた作品はなかった。
私は本作の著者でもある伊坂幸太郎を敬愛しており、彼の出版する作品はすぐに購入する。したがってこれまでの全作を読んできた。
著者自ら「ゴールデンスランバー」以降を自身の第二期と称していた。
しかし、本作からは第一期時代に出版された「オーデュボンの祈り」や「オー!ファーザー」に似た雰囲気が感じられた。
出てくる人物たちが愉快であり、あたかも隣にいるような、昔から友人であったかのように感じ、そして彼らが物語の深みを増していく。そうして一冊の、誰にも真似できない伊坂幸太郎の作品ができあがる、と私は思っている。
本作ではそこに「車が物語の案内人」という、楽しさを感じずにはいられない要素が含まれた。
この突拍子もない設定が本作の面白みを何倍にもしている。
車同士のなす会話、車における細やかな設定、車のもつ感情と逆らえない運転などなど、読んでいて微笑む場面が幾つもあった。本当に。幾つも。
例えば「自転車とは会話できない」とか「車輪の数が多いほど尊敬に値する」、「それぞれの持ち主を贔屓目に見てしまい語ってしまう」、「危険運転をされると気絶してしまう」、「クラクションが大嫌い」、「タクシーは偉そう」など。
読後でも思い返せば幾つも楽しい場面が頭に浮かんでくる。
隣に住むザッパとの会話、ファミレスや道中で出会った車との会話、人間に対する忠告と同時に伝わらないことへの落胆。
物語の案内人である望月家の持ち物である緑のデミオは、人間以上に言葉達者で冒険気質であった。

勿論、人間として登場してくる望月家の亨や良夫、母の郁子や、記者の玉田、隣家の細見校長。彼らもとても魅力的で勇気がありそして果敢で、やはり猛烈に会いたくなった。
そしてそして本作は物語としても非常に面白い。ユニークな会話の中にミスリードが含まれていたり、何気ない情景が後々関わってきたりなど、人物設定と車が話すという大きな設定に隠れない程の内容であった。

とにかく面白かった。楽しかった。
車に対する思いやりの気持ちが変わること間違いなしの一冊だった。
しかも本当では「オー!ファーザー」で登場した由紀夫と4人の父親、そして母親が登場するし、車同士の会話の中で「残り全部バケーション」の「検問」の話が登場する。
伊坂作品において久しぶりの作品間の共通があったのも本書の評価を高めた。

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