みんなのレビュー
全30,444件のレビュー
わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) 4
むっしゅ, みかみてれん, 竹嶋えく
己が処遇は自ら選びてむと陳ぶるれな子の様や、近代的主体性ある女性像を描きたれば、従前の小心故の逡巡葛藤も大胆なる雄弁も並て今めきたりて、方今の価値観を映ぜるげにげに現代劇然たる人物造形とぞ見ゆる。
12時間前
わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ! (※ムリじゃなかった!?) 3
むっしゅ, みかみてれん, 竹嶋えく
傷つけつるに傷つくも精一杯の勇気を張るも並べて夭々たる青さの眩きに紙面を直視しがてにぞある。
3日前
わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) 2
むっしゅ, みかみてれん, 竹嶋えく
理想とする所は同じけれど其帰結は違へたる様こそ懸隔のもどかしくもあれ。
やうやう己が好意を自覚しつつも友たらむと懊悩煩悶するれな子の様、同性への恋情に躊躇ふ様式美の変奏なれども、友人恋人の差異を絡めたれば、心情描写は清冽新鮮を呈せり。
やうやう己が好意を自覚しつつも友たらむと懊悩煩悶するれな子の様、同性への恋情に躊躇ふ様式美の変奏なれども、友人恋人の差異を絡めたれば、心情描写は清冽新鮮を呈せり。
7日前
私を喰べたい、ひとでなし 6
苗川采
寂しさを照らししあどなき比名子の直き心や一夏の晴天のごときらぎらしも。
生きてと絆しの絶江ぬれば沛然たる大雨に搔乱るる心の入水を思ふ様しぞ心傷れ窮まりぬる人の末路を描きたる。
人妖の境界や千尋の溝壑よりも深かるめれど呻吟して言選りに悩む汐莉の切なるこそげに殊勝なれ。
生きてと絆しの絶江ぬれば沛然たる大雨に搔乱るる心の入水を思ふ様しぞ心傷れ窮まりぬる人の末路を描きたる。
人妖の境界や千尋の溝壑よりも深かるめれど呻吟して言選りに悩む汐莉の切なるこそげに殊勝なれ。
2025年12月19日
わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ! (※ムリじゃなかった!?) 1
むっしゅ, みかみてれん, 竹嶋えく
事の進みの疾き様、年矢も斯くは早からじを、あからめさす間に連立ちて遊びゆくかも。
れな子の一般的ラブコメの男主人公じみた反応が異色を呈してゐるの観がある。
れな子の一般的ラブコメの男主人公じみた反応が異色を呈してゐるの観がある。
2025年12月16日
宇宙人ムームー(9)
宮下裕樹
アキヒロを問質す桜子の心ばせや一たび拗るれば其為人甚だ難儀なるめり。尋常の心様はいと人を臆せれども一旦思詰むれば勇み足に空回りの有様甚だ危なげなれば肝胆寒からしむるに優にぞ足れる。
2025年12月13日
林望先生訳源氏物語の第5巻。蛍、常夏、篝火、野分、行幸、藤袴、真木柱、梅枝、藤裏葉を収録。前半は玉鬘を中心に展開していく。源氏が兵部卿宮の前で玉鬘を蛍で演出してみせる蛍。そんな玉鬘と、内大臣が引き取った近江の君とを対象的に描く常夏。源氏と玉鬘との関係を記した篝火。玉鬘に内大臣の姿を見せた後、内大臣に真実?を打ち明ける行幸。兄弟ではないと知った夕霧が玉鬘に言い寄って断られる藤袴。そして、驚愕の出来事、真木柱である。これは現代で言えば明らかに犯罪だが、あとの方で朱雀院が女三宮を心配する際にも挙げているので、当時としてはよくあったことなのかもしれない。この辺り、読者の予想を裏切る紫式部の物語展開のうまさなのかもしれない。リンボウ先生の訳は親切で、昨日読んだところも忘れてしまう私としては大変ありがたい。野分は夕霧を案内人とした華やかな六条院の案内で、いわば読者サービスか。梅枝で様々な薫香が出てくるのだが、中には現代でも手に入るものもあり、興味が湧いた。藤裏葉では夕霧が積年の思いを遂げるのだが、後の展開を考えると、幼い頃の思いに引きずられなくてもと思ってしまう。ここら辺りも、紫式部の布石というところか。
2025年12月13日
LLMOps
Abi Aryan
LLMOpsの本が出版されるようになるとはと思いつつ読了。
タイトルの通り、LLMOps(LLM + Operations)について説明している本です。LLM(大規模言語モデル)、LLMアプリケーション、LLMに対するデータエンジニアリング、LLMの評価やガバナンス、インフラストラクチャなど網羅的なトピックとなっています。
ただ、この本って「全部自分で一からLLMOps環境を構築する」ことを前提としているんですよね。だから、インフラに関してもコンテナを自分で作ることを説明していたり、さまざまなOSSを組み合わせることを前提としています。
それで実践的かと言われるとそれほどでもなく、ソフトウェアや手法の列挙になっていることが多くて、「誰がこれを実践できるんだろう」とモヤモヤしながら読み終えました。
とはいえ、勉強になる部分もあったのでよかったです。
タイトルの通り、LLMOps(LLM + Operations)について説明している本です。LLM(大規模言語モデル)、LLMアプリケーション、LLMに対するデータエンジニアリング、LLMの評価やガバナンス、インフラストラクチャなど網羅的なトピックとなっています。
ただ、この本って「全部自分で一からLLMOps環境を構築する」ことを前提としているんですよね。だから、インフラに関してもコンテナを自分で作ることを説明していたり、さまざまなOSSを組み合わせることを前提としています。
それで実践的かと言われるとそれほどでもなく、ソフトウェアや手法の列挙になっていることが多くて、「誰がこれを実践できるんだろう」とモヤモヤしながら読み終えました。
とはいえ、勉強になる部分もあったのでよかったです。
2025年12月11日
宇宙人ムームー(8)
宮下裕樹
夏合宿に於る桜子の自身の未だ朴訥なるを痛感しつつも亦、流暢に電化製品の原理を説き得つることに成長を覚ゆる様にしぞ、入部爾来の経験の伝り来たり、読者をして一入の感慨に耽らしむる。
初期のムームーの省略作画が復活してきた。
初期のムームーの省略作画が復活してきた。
2025年12月11日
アサーション入門
平木典子
◽️雑感
本書は心理学の知見に基ける対話術「アサーション」に依る自己表現法の意義と方法とを説けり。
著者は攻撃的自己表現の行使者の末路を悪様に描きたれども、実証も無く断言しつれば公正世界仮説的願望混じりの臆断にぞ見ゆる。
アサーションは縦し己が意思を通じ得とも、万事恣になるとは限らぬことを前提とせり。他者理解に努めて歩寄り、妥協点を模索するを要すれば、故れ、他方の非協力的状況下に於ては有効たりや。説得術としては、『話が通じない相手と話をする方法』をしぞ参看すべきなるめる。
又アサーションに於ては、加害者の罪過の謝罪及び被害者の其を容赦するを肝要とすれども、是は世に散在する他者の瑕疵をゆめ赦さぬ人を対手として通用し得ねば、蓋し双方に協力の意図あるを要すべし。
◽️不正確大要
本書は、自身も対手も倶に尊重する自己表現(自他尊重の自己表現)としてのアサーションを解説する。アサーションは、単なる自己主張や口吻にあらず、心理学の知見に基づき、日常のやり取りに変化と充実感とを齎す対話の方法であり、より良い人間関係の在り方を含む。
自己表現の類型は大別して三つあり。一つは、自分を後回しにして意見を言はぬ、若しくは言ひ損ふ非主張的自己表現(non-assertive)であり、葛藤を避くる代りに、自己否定や欲求不満が蓄積し、心身の不調や突発的なる攻撃的行動(癇癪)に繋る虞がある。もう一つは、自分のことのみを考へ、対手の心情を無視又は軽視して押附くる攻撃的自己表現(aggressive)であり、一時的に意見が通るとも、長期的には敬遠せられ孤立を招く。是等に対してアサーティブなる自己表現は、両極端の表現の中間にある「黄金率」であり、自分の意思や感情を正直に伝へつつも、対手の反応を受止め、対等なる関係を築かうとする姿勢である。
アサーションの土台となるのは、「人として誰もがやって可いこと」(人権)を互に相認めると云ふ思想である。是には、自分らしくあって可いこと・感情や意思を表現して可いこと・過ちを犯した責任を取って可いこと(謝罪も亦権利)が含まれる。又アサーティブになる為には、「〜すべきだ」「当然だ」が如きの極端の先入観(アサーションの歯止め)を再考し、思考を柔軟に変化せさせることが重要となる。
アサーションは、我々の生活に三つの力を齎す。其実践は、課題達成を目的とする任務(Task)の為のアサーションと、関係維持や心の健康の為の保全(Maintenance)の為のアサーションに分け得る。タスクアサーションに於ては論理的言語表現が有効である一方で、メンテナンスアサーションに於ては感情の機微や情緒を伝ふる非言語的行動が重要となる。此二つの機能の均衡が、マズローの欲求段階説に於る「所属と愛との欲求」や「承認の欲求」を満たすことに繫り、最終的に「自己実現の欲求」へと至る。自己実現とは、自分自身を理解し、自分の持つものを最大限に活かさうとする欲求である。
複雑なる状況でアサーティブなる対話を行ふ為の具体的なる手掛りは三つの要点に収斂せられる。
1. 自分の心情を確かめる:自分は状況に対して如何にしたいのか、正直に心境を捉へる。
2. 事実や状況を共有する:感情のみならず、客観的状況や事実を相手に伝へ、共通の理解基盤を作る。
3. 提案は具体的に述べる:抽象的要求ではなく、具体的なる解決策や希望を提示する。
アサーションは、相手を意のままに操る魔術ではない。然し、葛藤や意見の不一致が生じても、其を相互理解の契機と捉へ、まづは己がアサーティブなる態度を取らうとすることで、建設的関係を創出することをなし得る。殊に「私メッセージ」を用ゐて自身の意思を率直に伝ふる工夫は、相手を非難せずに済む為に有効である。アサーションは、自分らしい生を築く為の自己表現法である。
本書は心理学の知見に基ける対話術「アサーション」に依る自己表現法の意義と方法とを説けり。
著者は攻撃的自己表現の行使者の末路を悪様に描きたれども、実証も無く断言しつれば公正世界仮説的願望混じりの臆断にぞ見ゆる。
アサーションは縦し己が意思を通じ得とも、万事恣になるとは限らぬことを前提とせり。他者理解に努めて歩寄り、妥協点を模索するを要すれば、故れ、他方の非協力的状況下に於ては有効たりや。説得術としては、『話が通じない相手と話をする方法』をしぞ参看すべきなるめる。
又アサーションに於ては、加害者の罪過の謝罪及び被害者の其を容赦するを肝要とすれども、是は世に散在する他者の瑕疵をゆめ赦さぬ人を対手として通用し得ねば、蓋し双方に協力の意図あるを要すべし。
◽️不正確大要
本書は、自身も対手も倶に尊重する自己表現(自他尊重の自己表現)としてのアサーションを解説する。アサーションは、単なる自己主張や口吻にあらず、心理学の知見に基づき、日常のやり取りに変化と充実感とを齎す対話の方法であり、より良い人間関係の在り方を含む。
自己表現の類型は大別して三つあり。一つは、自分を後回しにして意見を言はぬ、若しくは言ひ損ふ非主張的自己表現(non-assertive)であり、葛藤を避くる代りに、自己否定や欲求不満が蓄積し、心身の不調や突発的なる攻撃的行動(癇癪)に繋る虞がある。もう一つは、自分のことのみを考へ、対手の心情を無視又は軽視して押附くる攻撃的自己表現(aggressive)であり、一時的に意見が通るとも、長期的には敬遠せられ孤立を招く。是等に対してアサーティブなる自己表現は、両極端の表現の中間にある「黄金率」であり、自分の意思や感情を正直に伝へつつも、対手の反応を受止め、対等なる関係を築かうとする姿勢である。
アサーションの土台となるのは、「人として誰もがやって可いこと」(人権)を互に相認めると云ふ思想である。是には、自分らしくあって可いこと・感情や意思を表現して可いこと・過ちを犯した責任を取って可いこと(謝罪も亦権利)が含まれる。又アサーティブになる為には、「〜すべきだ」「当然だ」が如きの極端の先入観(アサーションの歯止め)を再考し、思考を柔軟に変化せさせることが重要となる。
アサーションは、我々の生活に三つの力を齎す。其実践は、課題達成を目的とする任務(Task)の為のアサーションと、関係維持や心の健康の為の保全(Maintenance)の為のアサーションに分け得る。タスクアサーションに於ては論理的言語表現が有効である一方で、メンテナンスアサーションに於ては感情の機微や情緒を伝ふる非言語的行動が重要となる。此二つの機能の均衡が、マズローの欲求段階説に於る「所属と愛との欲求」や「承認の欲求」を満たすことに繫り、最終的に「自己実現の欲求」へと至る。自己実現とは、自分自身を理解し、自分の持つものを最大限に活かさうとする欲求である。
複雑なる状況でアサーティブなる対話を行ふ為の具体的なる手掛りは三つの要点に収斂せられる。
1. 自分の心情を確かめる:自分は状況に対して如何にしたいのか、正直に心境を捉へる。
2. 事実や状況を共有する:感情のみならず、客観的状況や事実を相手に伝へ、共通の理解基盤を作る。
3. 提案は具体的に述べる:抽象的要求ではなく、具体的なる解決策や希望を提示する。
アサーションは、相手を意のままに操る魔術ではない。然し、葛藤や意見の不一致が生じても、其を相互理解の契機と捉へ、まづは己がアサーティブなる態度を取らうとすることで、建設的関係を創出することをなし得る。殊に「私メッセージ」を用ゐて自身の意思を率直に伝ふる工夫は、相手を非難せずに済む為に有効である。アサーションは、自分らしい生を築く為の自己表現法である。
2025年12月9日
宇宙人ムームー(7)
宮下裕樹
パブリックスター登場し、鶴見鮫洲も宇宙人の存在を認知し初めぬれば、環境遷ひ始めぬる新章の幕開けに、未知の展開への好奇と期待のいとど募りぬ。
方今ムームーの省略作画、アニメ版かんたん作画と異なりて、いづくかシベリアに似たる様にぞ見ゆる。
方今ムームーの省略作画、アニメ版かんたん作画と異なりて、いづくかシベリアに似たる様にぞ見ゆる。
2025年12月9日
宇宙人ムームー(6)
宮下裕樹
オクタル襲来巻なればはやアニメ終盤に至りぬ。未映像化回の選別基準や如何に。
桜子の田舎育ちの智慧や祖父母の記憶をしるくも描きたれば、最新技術を扱ふ家電の先進性との織成せる対照性しぞ全篇に人血通ふ妙味を与へたらむ。
作中経過期間八箇月なるに、連載中の現実の四季変遷に併せたる季節描写との整合を、月の接近に依る気候変動と説明附くるは妙案にして面白し。
ムームーも結構顔が竪に潰れてきた。
桜子の田舎育ちの智慧や祖父母の記憶をしるくも描きたれば、最新技術を扱ふ家電の先進性との織成せる対照性しぞ全篇に人血通ふ妙味を与へたらむ。
作中経過期間八箇月なるに、連載中の現実の四季変遷に併せたる季節描写との整合を、月の接近に依る気候変動と説明附くるは妙案にして面白し。
ムームーも結構顔が竪に潰れてきた。
2025年12月6日
宇宙人ムームー(5)
宮下裕樹
桜子の家電解説の板に附いてきた様にムームーとの生活の経過を感ぜられる。
さてもあはよくばと家電押売らむずる桜子のづうづうしさよ、都会に染まりぬるかも。
さてもあはよくばと家電押売らむずる桜子のづうづうしさよ、都会に染まりぬるかも。
2025年12月6日
Mine! 私たちを支配する「所有」のルール
マイケル・ヘラー, ジェームズ・ザルツマン
◽️雑感
本書は法学者に依る所有権概念の分析を易解するものなり。所有権の憑拠を分類せる所に著者の功ありと見ゆ。具体例は米国読者に向けたるものあれば、稍背景事情を察し得ず。
◽️不正確大要
本書は、我々が当然と考ふる「所有」の概念が、実には曖昧にして操作可能なる「所有権の設計(デザイン)」にあることを、具体的事例を挙げて解説する。其中心的主意は、所有権の規範は固定せられたものにあらず、常に変化し、特定の目的の為に「設計」せられると云ふことである。所有権と云ふ規範は、資源の稀少性の増大や技術の変化、社会的価値観の変遷に応じて、時に意図的且つ巧妙に調整せられてきた歴史がある。
著者は、我々が所有権を主張する際に用ゐる六つの典型的根拠、即ち「所有権ツールキット」を提示する。是等は、①早い者勝ち(First Come, First Served)・②占有(Possession)・③労働(Labor)・④附属(Attachment/Accession) ・⑤家族所有(Family Property) ・⑥家族所有権(Self-Ownership)である。
1. 早い者勝ち(First Come, First Served)
此規則は、最も原始的にして直感的なる所有権の根拠の一つである。然し、「誰が一番乗りかを誰が、決定するのか」と云ふ定義自体が、支配者や権力者に依て恣意的に行はれることがある。時間や金銭を基準に此規則が再設計せられることで、資源の配分方法が変化し、経済的価値や社会的価値が創出せられる場合がある。一方で、過度の競争や資源の濫獲に繫る可能性も指摘せられてゐる。
2. 占有(Possession)
身体的な占有に基づく所有権の主張は、人間の最も原始的なる本能に根差してゐる。心理学の「授かり効果」(Endowment Effect)は、人々が一時的にでも所有した物に対し、より高い価値を認むる傾向にあることを実証してゐる。アップルストアが製品を自由に触はり得る開放的なる店構へを採用してゐるのは、此占有本能を利用し、顧客に製品への愛着を抱かしむる為である。されども、物理的占有が常に法的所有権を意味するとは限らない(例:ショッピングカートの中の商品、預けた物)。
3. 労働(Labor)
「手づから蒔いた種を収穫する」と云ふ思想に基づき、自らの労働の成果を所有すると云ふ原則である。然れども、「何如なる労働が所有権の根拠となるか」の定義は恣意的で、差別の手段として用ゐられることもあった。又「ミッキーマウス延命法」の如く、ディズニー社等のロビー活動に依て著作権保護期間が延長せられ、パブリックドメインの享受が阻害せられることは、創造的労働への報いと公共の利益の間の緊張を示してゐる。
4. 附属(Attachment/Accession)
此原則は、「明らかに自分の物と分ってゐる物に附属する物は全て自分の物だ」と云ふ直感的なる主張である。伝統的には、土地の所有権は「上は天国迄、下は地獄迄」及ぶとせられてきた。然し、航空機の登場に依て、此「空中の所有権」は制限せられつつあり、ドローンに依る配達の将来的な導入に於ても、空域の所有権の再定義が求められてゐる。又南シナ海に於る中共の人工島建設は、排他的経済水域の権利を主張する為に、岩礁を人工的に拡大し「附属」の原則を応用した大規模な例である。
5. 家族所有(Family Property)
「家族の物だから私の物」と云ふ主張は、相続や離婚の如き家族の重要なる節目に於て、資産の所有権が何如に移転・分割せられるかを規定する。殊に、米国南部に於るアフリカ系アメリカ人の「相続不動産」の問題は深刻であり、遺言書の無いとき、土地の所有権は多数の遠い親戚に細分化せられ、全員の同意が必要となる故に土地の管理が困難となり、最終的に外部の買手に廉価で買叩かれる事態が多発してをり、白人と黒人との間の資産格差の一因ともなってゐる。
6. 自己所有権(Self-Ownership)
「私の身体は私のもの」と云ふ自己所有権は、奴隷制の廃止に依て確立した基本的人権なれど、其範囲は常に議論の対象となってゐる。臓器売買(腎臓・卵子)は、人間の尊厳を害ふ行為として殆どの国で禁止せられてゐるが、其結果として闇市場が形成せられ、命が失はれると云ふ悲劇も生じてゐる。著者は、臓器売買を全面禁止する「オン/オフ・スイッチ」的な発想ではなく、適切なる規制の下に市場を設計する「調整つまみ」的発想(例:骨髄幹細胞の売買を許可した判決) が、より多くの命を救ふ可能性を秘めてゐると示唆する。又、職業スポーツ選手がチームによって売買せられる状況や、大学競技選手が肖像権等の自己所有権を制限せられてきた問題・従業員の競業避止義務契約も、自己所有権の限界の問はれる事例として紹介せられてゐる。
本書は、所有権の規範は社会の重要なる構成要素であり、我々の価値観を深く反映してゐることを強調する。所有権は偶然に発生するものにあらず、常に変化し、特定の利害関係者に依て「設計」せられてゐる。斯くの如き理解は、個人が自身の財産や自由・社会の未来に関する選択を行ふ上で不可欠であると、著者は論を結ぶ。我々が直面する複雑なる地球規模の課題を解決する為には、所有権の概念を再考し、より持続可能にして公正なる未来を構築する為の「設計」を行ふ必要がある。
本書は法学者に依る所有権概念の分析を易解するものなり。所有権の憑拠を分類せる所に著者の功ありと見ゆ。具体例は米国読者に向けたるものあれば、稍背景事情を察し得ず。
◽️不正確大要
本書は、我々が当然と考ふる「所有」の概念が、実には曖昧にして操作可能なる「所有権の設計(デザイン)」にあることを、具体的事例を挙げて解説する。其中心的主意は、所有権の規範は固定せられたものにあらず、常に変化し、特定の目的の為に「設計」せられると云ふことである。所有権と云ふ規範は、資源の稀少性の増大や技術の変化、社会的価値観の変遷に応じて、時に意図的且つ巧妙に調整せられてきた歴史がある。
著者は、我々が所有権を主張する際に用ゐる六つの典型的根拠、即ち「所有権ツールキット」を提示する。是等は、①早い者勝ち(First Come, First Served)・②占有(Possession)・③労働(Labor)・④附属(Attachment/Accession) ・⑤家族所有(Family Property) ・⑥家族所有権(Self-Ownership)である。
1. 早い者勝ち(First Come, First Served)
此規則は、最も原始的にして直感的なる所有権の根拠の一つである。然し、「誰が一番乗りかを誰が、決定するのか」と云ふ定義自体が、支配者や権力者に依て恣意的に行はれることがある。時間や金銭を基準に此規則が再設計せられることで、資源の配分方法が変化し、経済的価値や社会的価値が創出せられる場合がある。一方で、過度の競争や資源の濫獲に繫る可能性も指摘せられてゐる。
2. 占有(Possession)
身体的な占有に基づく所有権の主張は、人間の最も原始的なる本能に根差してゐる。心理学の「授かり効果」(Endowment Effect)は、人々が一時的にでも所有した物に対し、より高い価値を認むる傾向にあることを実証してゐる。アップルストアが製品を自由に触はり得る開放的なる店構へを採用してゐるのは、此占有本能を利用し、顧客に製品への愛着を抱かしむる為である。されども、物理的占有が常に法的所有権を意味するとは限らない(例:ショッピングカートの中の商品、預けた物)。
3. 労働(Labor)
「手づから蒔いた種を収穫する」と云ふ思想に基づき、自らの労働の成果を所有すると云ふ原則である。然れども、「何如なる労働が所有権の根拠となるか」の定義は恣意的で、差別の手段として用ゐられることもあった。又「ミッキーマウス延命法」の如く、ディズニー社等のロビー活動に依て著作権保護期間が延長せられ、パブリックドメインの享受が阻害せられることは、創造的労働への報いと公共の利益の間の緊張を示してゐる。
4. 附属(Attachment/Accession)
此原則は、「明らかに自分の物と分ってゐる物に附属する物は全て自分の物だ」と云ふ直感的なる主張である。伝統的には、土地の所有権は「上は天国迄、下は地獄迄」及ぶとせられてきた。然し、航空機の登場に依て、此「空中の所有権」は制限せられつつあり、ドローンに依る配達の将来的な導入に於ても、空域の所有権の再定義が求められてゐる。又南シナ海に於る中共の人工島建設は、排他的経済水域の権利を主張する為に、岩礁を人工的に拡大し「附属」の原則を応用した大規模な例である。
5. 家族所有(Family Property)
「家族の物だから私の物」と云ふ主張は、相続や離婚の如き家族の重要なる節目に於て、資産の所有権が何如に移転・分割せられるかを規定する。殊に、米国南部に於るアフリカ系アメリカ人の「相続不動産」の問題は深刻であり、遺言書の無いとき、土地の所有権は多数の遠い親戚に細分化せられ、全員の同意が必要となる故に土地の管理が困難となり、最終的に外部の買手に廉価で買叩かれる事態が多発してをり、白人と黒人との間の資産格差の一因ともなってゐる。
6. 自己所有権(Self-Ownership)
「私の身体は私のもの」と云ふ自己所有権は、奴隷制の廃止に依て確立した基本的人権なれど、其範囲は常に議論の対象となってゐる。臓器売買(腎臓・卵子)は、人間の尊厳を害ふ行為として殆どの国で禁止せられてゐるが、其結果として闇市場が形成せられ、命が失はれると云ふ悲劇も生じてゐる。著者は、臓器売買を全面禁止する「オン/オフ・スイッチ」的な発想ではなく、適切なる規制の下に市場を設計する「調整つまみ」的発想(例:骨髄幹細胞の売買を許可した判決) が、より多くの命を救ふ可能性を秘めてゐると示唆する。又、職業スポーツ選手がチームによって売買せられる状況や、大学競技選手が肖像権等の自己所有権を制限せられてきた問題・従業員の競業避止義務契約も、自己所有権の限界の問はれる事例として紹介せられてゐる。
本書は、所有権の規範は社会の重要なる構成要素であり、我々の価値観を深く反映してゐることを強調する。所有権は偶然に発生するものにあらず、常に変化し、特定の利害関係者に依て「設計」せられてゐる。斯くの如き理解は、個人が自身の財産や自由・社会の未来に関する選択を行ふ上で不可欠であると、著者は論を結ぶ。我々が直面する複雑なる地球規模の課題を解決する為には、所有権の概念を再考し、より持続可能にして公正なる未来を構築する為の「設計」を行ふ必要がある。
2025年12月1日