みんなのレビュー
全30,540件のレビュー
南総里見八犬伝1
曲亭馬琴,小池藤五郎
南総里見八犬伝の全巻を網羅したもの。文庫版を改変して漢字を新字体にし、異体字も通常の漢字に変更されている。原本では馬琴の「俺は物知り」的な難しい漢字の羅列が一つの特徴で文庫版ではそれを保存していたらしい。確かにそれも興味深いが、読みやすさでは新字体の方が上だ。そのせいもあって、原文のままで特に現代語訳している訳ではないのに、時々辞書を引けばまぁまぁ理解できる。何より音読すると、七五調の美文が心地よい。これは現代語訳版にはない特長だ。第1巻の内容は、伏姫の念珠の玉が八方に飛び散る八犬伝の端緒から八犬伝では人気の高いと思われる犬塚信乃を中心としたストーリーである。鎌倉方とか京都とか管領とか沢山人が登場し、反旗を翻し許されまた反旗を翻しと勢力図も変わるので、整理しておかないとよく理解できない。八犬伝は全体を通して義の物語なのだろうが、体制に歯向かって滅亡していく主君のかたきを討つというのは、どうも理解できない。まぁ、その辺りをすっ飛ばしても楽しめるのは確かであろう。
5日前
グランゼコールの教科書
ジャン=フランソワ・ブラウンスタン, ベルナール・ファン
■雑感
政治史・文化史・思想史・科学史に亙る最も広範なる西洋史の書なり。げにも瞠目すべきは編著ならで著者僅か2人のみなるかな。
政治史・文化史・思想史・科学史に亙る最も広範なる西洋史の書なり。げにも瞠目すべきは編著ならで著者僅か2人のみなるかな。
6日前
Think critically クリティカル・ シンキングで真実を見極める
ジョエル・ベスト, 飯嶋貴子
■雑感
一見は思考術の教本を思はする書名なれども、是は社会学研究法の書ぞ。研究上陥り易き過謬の種々を挙ぐるを以て学徒を警めむとせり。
一見は思考術の教本を思はする書名なれども、是は社会学研究法の書ぞ。研究上陥り易き過謬の種々を挙ぐるを以て学徒を警めむとせり。
7日前
FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング, アンナ・ロスリング・ロンランド, 上杉周作, 関美和
■雑感
認知バイアスの齎せる謬見を、実証的にして定量的なる証拠に基づきて論駁し、衆人をして蒙を啓き知に到らしめむとするとする労作ぞ。
著者は左派の価値観に立脚したれども、煽動的ジャーナリストや活動家に手厳しく、党派に与せぬ其心意義や良きかも。
認知バイアスの齎せる謬見を、実証的にして定量的なる証拠に基づきて論駁し、衆人をして蒙を啓き知に到らしめむとするとする労作ぞ。
著者は左派の価値観に立脚したれども、煽動的ジャーナリストや活動家に手厳しく、党派に与せぬ其心意義や良きかも。
2026年5月12日
◽️雑感
複雑系・進化論・ゲーム理論・神経科学・功利主義の5キーワードの下で、自然科学の知見に基づく新しい人文・社会科学の姿を紹介してゐる。
旧来の文学を中核とするテクスト読解に重きを置く人文社会科学はいかに対応する、今のまま黙殺の態度を貫かばやがて主流の座を失はむこと必定ぞ。
複雑系・進化論・ゲーム理論・神経科学・功利主義の5キーワードの下で、自然科学の知見に基づく新しい人文・社会科学の姿を紹介してゐる。
旧来の文学を中核とするテクスト読解に重きを置く人文社会科学はいかに対応する、今のまま黙殺の態度を貫かばやがて主流の座を失はむこと必定ぞ。
2026年5月11日
完訳・現代語版南総里見八犬傳6
瀧沢馬琴,羽深律
現代語訳版の南総里見八犬伝の第6巻。第九輯の中帙を収めている。馬琴の序によると九は陽数の終わりなので、八犬伝はどうしても九輯で終わらないといけないらしい。九輯は既に5巻で12回分の上帙があったが、この中帙でも12回分で、まだまだ終わりそうにない。里見が御曹司である義通を素藤に人質に取られて窮地に陥る中、鷲に攫われて行方不明になっていた親兵衛が義実の前に現れ、刺客に襲われた義実を救い、更に単騎で館山城に乗り込んで素藤を捕らえ、城を落としてしまう。しかし、素藤に濱路姫のことを吹き込んだ妙真は、追放された素藤らを集め、義成に親兵衛を遠ざけさせた上で館山城を再び乗っ取ってしまう。義成は四家老の一人である清澄に館山城を攻めさせるが、妙真の幻術のためうまくゆかない。一方、旅に出た親兵衛は扇谷定正の臣下で処刑されそうになっている河鯉孝嗣と出会う。第5巻で死んでしまった船虫に代わって、より強力な悪役である妙真が活躍する。最初に親兵衛が館山城に乗り込むところはちょっと非現実的な気がするが、幻術によって親兵衛を遠ざける辺りは面白い。かつて見た人形劇では玉梓の怨霊が活躍するのだが、原作ではむしろ伏姫の方が活躍している。恐らく妙真は玉梓と関係があるのだろうが、それはまだ説明がなく、いつ語られるのか興味が湧く。それにしても、全10巻中6巻までで刊行が終了してしまったのは残念である。
2026年5月3日
完訳・現代語版南総里見八犬傳5
瀧沢馬琴,羽深律
現代語訳版の南総里見八犬伝の第5巻。第八輯のつづきと第九輯とを収めている。第八輯は第4巻からのつづきで、他の輯の倍の長さがある。第八輯のつづきでは、大角と現八とが盗人と間違われ捕らえられてしまうが、引かれていった先の夏行の娘の重戸に助けられ、難を逃れようとした先で道節と信乃に会い、真犯人も捉えることができ、重戸の夫有種は豊嶋の家臣だったことがわかる。第八輯の後半では毛野が、囚われの身となっている小千谷の次團太の子分の願いで、扇谷定正の妻蟹目御前に次團太の開放を願い出て叶えられ、また縁連を除こうとする守如に協力し自らの仇でもある縁連を第九輯で討つ。縁連が討たれたことを知り城外に出た扇谷定正を、二人の話を立ち聞きしていた道節は、有種の助力を得て討とうとする。定正は守如の駕籠に助けられ、犬士たちはそれ以上追うことを断念する。守如の息子は毛野が謀ったのか説明を求めるが、道節から毛野が定正討伐の動きを知らなかったと聞いて納得する。この騒動の中で船虫は小文吾たちに成敗されてしまう。九輯の後半は安房の話で、盗賊から館山城主となった素藤と、その素藤が濱路姫を求めて起こした戦いを描く。毛野は守如のお陰で仇の縁連を討つことができたのに、守如は策に走り過ぎたと言う。守如も恩のある蟹目御前も自殺してしまうのだが、この辺りは主人公たちのためには周りの人間の命は顧みないというこれまでの流れそのままである。それにしても、船虫があっけなく殺されてしまうのは意外だ。
2026年4月26日
謹訳源氏物語10
紫式部,林望
林望先生訳源氏物語の第10巻、最終巻。浮舟、蜻蛉、手習、夢浮橋を収録。薫のことをありがたく思いながらも匂宮の情熱に惹かれて板挟みに悩む浮舟。その名は匂宮に乗せられた小舟から。浮舟の失踪に対する匂宮、薫の反応を記した蜻蛉。巻名は薫が浮舟を詠んだ和歌から。びっくり仰天、浮舟のその後を記す手習。巻名は浮舟が出家を遂げたあとにする手習。噂を聞きつけた薫の対応を描く夢浮橋。と、これで宇治十帖というか源氏物語が終焉を迎えるのだが、なんとも中途半端な感じを拭えない。紫式部は、これで書きたいことを書き終えたのだろうか。情熱だけで誠意のない匂宮、誠意はあっても真剣さの足りない薫、他人に対する思いやりに欠ける中の君、横川の僧都の家族にべったり頼りながらも誠意の欠片もない浮舟と、どうも感心しない人たちばかりな気がする。宇治十帖はスーパースターではなく普通の人を描きたかったのだとか聞いたことがある。確かに普通の人は様々生じる事態に適切に対応することはできず、むしろ体面を繕うことに汲々として事態を悪化させるということもあり、そうした成り行きにじれったい思いをさせるというのが狙いなのか。
2026年4月24日