
あるキング (徳間文庫 い 63-1)
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本書の帯には「今までの伊坂作品とはひと味違う!」と書かれていたが、私にはこれこそ私の大好きな伊坂作品だと感じられた。ミステリーとしての小説、もしくは謎解きのための登場人物ではなく、まるで彼らの物語を直接目にしてるかのような、それでいてどこか幻想染みている、そんな印象を久しぶりに強く受けた。現実は幻想で、幻想は現実。まさに「フェアはファウルでファウルはフェア」である。
小説を読んでいて、特に人物間の会話の部分で思わず頬が緩むことは頻繁にあるのだろうか。少なくとも私の読書人生においてその経験は多くはない。そして数少ない経験の多くが伊坂幸太郎によるものである。私は本書「あるキング」でその経験をまた一つ増やした。どうしてか心が落ち着き、人物が魅力的に見えてくるのである。そして彼らの言動に憧れ、親近感を覚え、どうも架空の人物だと思えない、いや思いたくなくなるのである。しかし、伊坂幸太郎は時にはっとする出来事も描く。主人公山田王求の父親が王求をいじめた先輩を殺したり、仙台キングス監督が王求を嫉妬と誠実心のあまり刺したりと、突然にそれまでの平和を破壊する。こういった部分も彼の作品の魅力だろうと私は思う。
本書は是非もう一度読み直したい作品である。それほどまでに面白かった。
フェアはファウルでファウルはフェア。どっちが正しいかなんて誰にも分からない。
以下ネタバレ
山田夫妻のもとに生まれた王求は野球の才能に恵まれ、そして両親の協力のもと努力も惜しまなかったため、12歳の頃にプロの全力投球をホームランするなど類稀なる天才と評価されていた。しかし父親が殺人を犯してしまったり、先輩に虐められたりと様々な困難を経験するが、王求は練習を怠らず日々続けた。そうしてプロになったある日の打席、思わぬ場面で監督に刺される。それを隠したまま打席に立つが、上手くバットを振ることもできない。そこでこれまで関わってきた人の声が聞こえる。「がんばれ!頑張れ!我を張れ!」王求はそこでこれまでの完璧で見惚れるようなフォームとは打って変わった粗雑なフォームでホームランを打つ。これこそ、王が人間になった瞬間である。そして新たな王が誕生する。

私にとっては伊坂らしく感じる本。この手の主人公には、ものすごく惹かれる…。

スカッとするね。間違いのないことには鳥肌が立っちゃうね。すべてがフェアでファウルなら、たぶん今感じている感情だけが真実だね。

































