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📝 レビュー (zooko012さんのレビュー)

レビュー:
本屋大賞受賞ということで偏見により敬遠(?)していた本書である。友人に薦められて手に取ったが、良書。

調律師になった男の子が主人公である。先輩達・お客さんとの関わりの中で調律師として成長していく。音の森から音を拾い出し世界を作るということ。ピアニストをあきらめ、ピアニストを支えるということ。ピアノを生活の楽しみとしている人達を支えるということ。下手な恋愛模様など盛り込まず、ひたすら、音を創るということ、ピアノ、ピアノを巡る人達について、調律の矜持について、丁寧に繊細に書いていくところが、とてもとてもよく、心にじんわりと染み入る。

男の子が目指す音として、原民喜の文章を引用しながら、「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のように確かな文体」をあげる。そのような読後感のある小説である。同じ印象を受ける「パリ左岸のピアノ工房」(これも良書)を改めて読み直してみたくなった。

読書履歴

2016/05/08 243ページ

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