
📝 レビュー (あおみさんのレビュー)
一言で表すのならば、鼻につく奴だ。
ただ、元結婚相手を殺したくなるという気持ちには大変共感できる。それほどまでに憎く、醜い人間だった。
さらに共感できる点が、青年の動機である。彼は自分がその環境に身を置きたくないからではなく、その環境で暮らさなくてはならない母と妹を思って殺人を計画した。また、その殺人を勘付かれた元友人の殺害計画を企てた際の動機も、人殺しの息子や兄をもつ苦しみを慮ってのことだった。いや、恐らく彼自身の気持ちも多分に含まれていただろう。しかし、最大の動機は家族愛だった。
そして、最後、青年は自殺する。その描写が大変美しく、潔く、輝いていて、私は驚くと同時にうっとりした。
自殺の動機もやはり家族愛で、自分にかかった容疑が晴れることがないと推測し、母と妹に降りかかる災難を最小限にするためだった。
小説としては、中々殺人に至らないもどかしさを覚えたが、リアリティに富んだ良作だった。
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