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望みは何と訊かれたら (新潮文庫)

望みは何と訊かれたら (新潮文庫)

小池 真理子

この本の所有者

3人が登録
83回参照
2013年9月13日に更新

書籍情報

ページ数:
621ページ
参照数:
83回
更新日:
2013/09/13
所有者:
kyoko kyokoさん

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📝 レビュー (kyokoさんのレビュー)

評価:
3/5
レビュー:
映画『実録・連合赤軍−あさま山荘への道程』は、連合赤軍のアジトで繰り広げられた革命論議や凄惨なリンチの状況がつぶさに描かれていましたが、この小説でも革命ゲバルト集団「革命インター解放戦線」の面々が閉ざされた思想の中で狂気の世界へ突き進んで行く様が丁寧に描かれています。
この小説は、実際に連合赤軍に身を置き山岳アジトでリンチにより亡くなってしまった遠山美枝子さんをモチーフにして創られたものと思います。当時(70年代初頭)の学生達の空気・流れというものに乗ってしまった彼女が、アジトから命かながら脱走して見ず知らずの学生に助けられ、飼育され、今度はそこから脱走し、数十年振りに偶然再会する…という展開を想い描き、それを骨子にして組立てして行ったものと思いますが、革インターの活動の描写は「怒涛のような骨太な流れ」、中盤以降に現れる完全なる飼育の状況は一転して「静寂が支配する世界」、そして後半の熟年同士となった吾郎と沙織の再会…と、ストーリーに沿ったメリハリのある描写は見事。心身ともに困憊した主人公が飼育される中で抱く複雑な感情の機微と、再会後の2人が互いに多くを望まず無感情を装いながらもその距離感を縮めて行く様子は特に素晴らしい。
この小説が醸し出す空気や主人公の感情の移ろいを、20代30代の方々が理解するのは難しいかも知れません。ただ、“あの時代”に身を置いた経験を持つ方々限定の小説では決してなく、中年以降の女性の感性を丁寧に拾い集めたような、脆くて大変敏感な小説であるという面からすれば、共感する女性は多いのではないでしょうか。

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