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📝 レビュー (あおみさんのレビュー)
評価:
5/5
レビュー:
感動した。
なにに感動したのかはわからない。
大切な恋人との死別であったり、念願の夢が叶うであったり、新しい家族が誕生したであったりなどの内容では、もちろんない。
しかし、確かに私の目は少なからず潤んでいた。
星野一彦という男は愚直で誠実、計算できない男である。それ故、五人もの女性と付き合いをする。いわゆる二股の上をいく五股である。
そんな彼のそんな性格が仇となり、理由は分からないが「あのバス」に乗り、どこか知らない土地へ連れ去られることに。彼はそれを受け入れ、しかしその前に五人の彼女に別れを告げたいと、まさに愚直に申し出た。
星野一彦を「あのバス」に乗せるため遣いとして現れた繭美という巨大な女性とともに五人にそれぞれ会いにいく。
この五回の別れが涙を誘ったわけではない。むしろ、思わず噴き出してしまうような笑いがそこにあった。
例えば、別れとジャンボラーメンの大食いを天秤に掛けたり、自ら別れを告げたのにも関わらず即決されたことに不満を感じたり。
とにかく星野一彦は人のことを考える男だった。いや、考えすぎる男だった。自分が死ぬかも分からないのに、当て逃げされた彼女を慮り犯人確保に尽力したり、彼女の病気を心配したり、彼はとにかく楽しんでいた。
五股を楽しんでいたのではなく、人と接することを常に楽しんでいた。
それが五股を招いたのだから賞賛される行動ではなく、寧ろいい大人なのだから善悪の分別ぐらい考えろ、と言われてもおかしくないのだが、私にはそんな彼が輝いて見えた。
少なからず、彼は彼女たちの心に生きていた。
そして、愛されていた。
私にはそれが途轍もなく羨ましく、妬ましく、憧れた。
そんな彼の潔い最後に私は感動したのかもしれない。
数々の人間の心に居場所を作りながらも、それを利用しようともせず去ろうとする姿に、一種の苛立ちと感動を覚えたのかもしれない。
なんで必死に生きようとしないんだ!
なんでそんなに格好いいことができるんだ!
格好悪くても生きろよ!
と。
でもそれをしない彼に感動し、涙を流したのだろう。
傍若無人、礼儀知らず、自分勝手、自己中心、性格が捻じ曲がっている、人の不幸こそが自分の幸せ。こういった言葉がすっぽり当てはまる繭美は最後、星野一彦が乗った「あのバス」に追い付き星野を助けるため必死になる。道を歩く学生を恐喝し、辞書を取り上げ、自分の辞書にはない「人助け」「救い」などの言葉を調べ、自分が星野一彦を助ける理由にこじつけようとする。しかし学生の辞書はドイツ語のものであった。
その後彼女はその学生が手押ししていたバイクに跨り、そんなこじつけの理由なしに「あのバス」に向かおうとする。しかしそのバイクはバッテリーがなくいくらキックしてもエンジンはかからない。そのことに憤慨するが、何度もキックする彼女。
この描写によって物語は幕を閉じる。
著者は書かなかったが、繭美の目には涙があり、それは頬を幾度となく伝っていたと思う。
星野一彦はまたしても居場所を作ったのだ。
人の心に自分の存在をしっかりと刻み込むが自分はそれに気付いていない。
やはり、羨ましく妬ましい。
そしてやはり、キラキラと輝いて見える。
なにに感動したのかはわからない。
大切な恋人との死別であったり、念願の夢が叶うであったり、新しい家族が誕生したであったりなどの内容では、もちろんない。
しかし、確かに私の目は少なからず潤んでいた。
星野一彦という男は愚直で誠実、計算できない男である。それ故、五人もの女性と付き合いをする。いわゆる二股の上をいく五股である。
そんな彼のそんな性格が仇となり、理由は分からないが「あのバス」に乗り、どこか知らない土地へ連れ去られることに。彼はそれを受け入れ、しかしその前に五人の彼女に別れを告げたいと、まさに愚直に申し出た。
星野一彦を「あのバス」に乗せるため遣いとして現れた繭美という巨大な女性とともに五人にそれぞれ会いにいく。
この五回の別れが涙を誘ったわけではない。むしろ、思わず噴き出してしまうような笑いがそこにあった。
例えば、別れとジャンボラーメンの大食いを天秤に掛けたり、自ら別れを告げたのにも関わらず即決されたことに不満を感じたり。
とにかく星野一彦は人のことを考える男だった。いや、考えすぎる男だった。自分が死ぬかも分からないのに、当て逃げされた彼女を慮り犯人確保に尽力したり、彼女の病気を心配したり、彼はとにかく楽しんでいた。
五股を楽しんでいたのではなく、人と接することを常に楽しんでいた。
それが五股を招いたのだから賞賛される行動ではなく、寧ろいい大人なのだから善悪の分別ぐらい考えろ、と言われてもおかしくないのだが、私にはそんな彼が輝いて見えた。
少なからず、彼は彼女たちの心に生きていた。
そして、愛されていた。
私にはそれが途轍もなく羨ましく、妬ましく、憧れた。
そんな彼の潔い最後に私は感動したのかもしれない。
数々の人間の心に居場所を作りながらも、それを利用しようともせず去ろうとする姿に、一種の苛立ちと感動を覚えたのかもしれない。
なんで必死に生きようとしないんだ!
なんでそんなに格好いいことができるんだ!
格好悪くても生きろよ!
と。
でもそれをしない彼に感動し、涙を流したのだろう。
傍若無人、礼儀知らず、自分勝手、自己中心、性格が捻じ曲がっている、人の不幸こそが自分の幸せ。こういった言葉がすっぽり当てはまる繭美は最後、星野一彦が乗った「あのバス」に追い付き星野を助けるため必死になる。道を歩く学生を恐喝し、辞書を取り上げ、自分の辞書にはない「人助け」「救い」などの言葉を調べ、自分が星野一彦を助ける理由にこじつけようとする。しかし学生の辞書はドイツ語のものであった。
その後彼女はその学生が手押ししていたバイクに跨り、そんなこじつけの理由なしに「あのバス」に向かおうとする。しかしそのバイクはバッテリーがなくいくらキックしてもエンジンはかからない。そのことに憤慨するが、何度もキックする彼女。
この描写によって物語は幕を閉じる。
著者は書かなかったが、繭美の目には涙があり、それは頬を幾度となく伝っていたと思う。
星野一彦はまたしても居場所を作ったのだ。
人の心に自分の存在をしっかりと刻み込むが自分はそれに気付いていない。
やはり、羨ましく妬ましい。
そしてやはり、キラキラと輝いて見える。
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