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キッチン (角川文庫)

キッチン (角川文庫)

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(4.3)
53人が登録
371回参照
2015年7月12日に更新

書籍情報

ページ数:
200ページ
参照数:
371回
登録日:
2015/06/07
更新日:
2015/07/12

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内容紹介

家族という、確かにあったものが年月の中でひとりひとり減っていって、自分がひとりここにいるのだと、ふと思い出すと目の前にあるものがすべて、うそに見えてくる―。唯一の肉親の祖母を亡くしたみかげが、祖母と仲の良かった雄一とその母(実は父親)の家に同居する。日々のくらしの中、何気ない二人の優しさにみかげは孤独な心を和ませていくのだが...。世界二十五国で翻訳され、読みつがれる永遠のベスト・セラー小説。泉鏡花文学賞受賞。
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📝 レビュー (とくこさんのレビュー)

評価:
3/5
レビュー:
死に囚われて悲しみに囚われた人たちが、前に進む。

吉本ばななは置いて行かれた人たちの悲しみの表現の幅が広い。
日常の中のさりげない一幕に悲しみが置かれてる。

そういった日々の描写の印象が強すぎて、話の本筋とかラストにそこまで思い入れが持てないのはいいのか悪いのか。

読書履歴

2015/07/12 200ページ
2015/07/12 178ページ 真昼にこうしてふと思い出しても、泣かずにいられるようになったことが、妙にむなしい。果てしなく遠い彼が、ますます遠くへ行ってしまうように思える。
2015/07/12 167ページ ライトの色が交差し、光の河が曲がってくる。信号が闇に明るく浮かぶ。ここで、等が死んだ。ひそやかに厳粛な気持ちが訪れる。愛する者の死んだ場所は未来永劫時間が止まる。もし、同じ位置に立てたなら、その苦しみも伝わるといいと人は祈る。
2015/07/12 159ページ 顔はあまり似ていなかったが、柊の手の指とか、ちょっとした時の表情の動かし方とかは、よく私の心臓を止めそうになった。
2015/07/05 83ページ どうしても、自分がいつか死ぬということを感じ続けていたい。でないと生きている気がしない。だから、こんな人生になった。闇の中、切り立った崖っぷちをじりじり歩き、国道に出てほっと息をつく。もうたくさんだと思いながら見上げる月明かりの、心にしみ入るような美しさを、私は知っている。
2015/07/05 76ページ 私は読み終えて、手紙をもとのようにそっとたたんだ。えり子さんの香水の匂いがかすかにして、胸がきりきりした。この香りも、やがて、いくらこの手紙を開いてもしなくなってしまう。そういうことが、いちばんつらいことだと思う。
2015/07/05 62ページ 夢のキッチン。私はいくつもいくつもそれをもつだろう。心の中で、あるいは実際に。あるいは旅先で。ひとりで、大ぜいで、二人きりで、私の生きるすべての場所で、きっとたくさんもつだろう。
2015/06/27 43ページ 私は今、彼に触れた、と思った。一ヵ月近く同じ所に住んでいて、初めて彼に触れた。ことによると、いつか好きになってしまうかもしれない。と私は思った。恋をくると、いつもダッシュで駆け抜けてゆくのが私のやり方だったが、曇った空からかいま見える星のように、今みたいな会話の度に、少しずつ好きになるかもしれない。
2015/06/27 41ページ 透明にしんとした時間が、ペンの音と共に一滴一滴落ちてゆく。
2015/06/27 37ページ それ、その健全さがとても好きで、あこがれで、それにとってもついていけない自分をいやになりそうだったのだ。昔は。
2015/06/27 36ページ 宗太郎は大声で言ったを彼のこの陽気な素直さを私は昔、本気で愛していたが、今はうるさいのですごく恥ずかしいだけだった。
2015/06/27 32ページ 祖母が死んで、この家の時間も死んだ。
2015/06/07 23ページ 「だから、そのソファーは、当分君のものだよ。君のベッドだよ。」彼は言った。「使い道があって本当に良かった。」「私。」私はかなりそっと言ってみた。「本当にここで眠っていいの?」「うん。」彼はきっぱり言った。
2015/06/07 15ページ ソファーに戻ってすわると、熱いお茶が出た。ほとんど初めての家で、今まであまり会ったことのない人と向かい合っていたら、なんだかすごく天涯孤独な気持ちになった。雨に覆われた夜景が闇ににじんでゆく大きなガラス、に映る自分と目が合う。世の中に、この私に近い血の者はいないし、どこへ行ってなにをするのも可能だなんてとても豪快だった。こんなに世界がぐんと広くて、闇はこんなにも暗くて、その果てしない面白さと淋しさに私は最近初めてこの手で目で触れたのだ。今まで、片目をつぶって世の中を見ていたんだわ、と私は、思う。
2015/06/07 8ページ ただ星の下で眠りたかった。朝の光で目覚めたかった。それ以外のことは、すべてただ淡々と過ぎていった。

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