
📝 レビュー (aoitakuさんのレビュー)
この物語は赤朽葉家三代に渡る物語である。
それは間違いないのだけれど、物語の語り手と、読み手である我々との認識の齟齬が、こんなに心地良いものだとは思わなかった。
このミス2008において国内2位という快挙を達成した本作品は、もちろんミステリである。だから、この作品には謎があり、読むにつれて明らかになっていく、そういう形式をとっていることは間違いない。
この作品の構成の見事なところは、『謎』の正体をちらつかせながらも、決してそれを主にしては語らず、構成の幹としてはミステリでありながら、その枝葉は、やっぱり赤朽葉三代に渡る物語にある、この点だと思う。日本が戦後どういう道を辿ってきたか、その道筋の描き方に魅力がなければ、この作品の構成を生かすことはできなかったろう、と。
最初こそ頭を捻り首を傾げながら、「不思議な面白さのある本。どこがどう面白いのか言葉にするのがむずかしい」とそんなことを考えつつ読んでいたのだけれど。
葉が朽ちて枝が、幹があらわになって、初めて物語の意味を知ったのだ。
***
それにしても、このひとは相変わらず独特な言葉の書き方をする。漢字とかなの使い分けが、妙だ。決して悪い意味ではなくて、むしろ気に入っている。
あと、真っ直ぐでけれども捻くれた等身大の感情を描くのが上手いひとだなぁと思う。砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないでも同じことを思ったけれど、青春小説は感情のフィードバックなくして受け入れられるものではなく、この点で、このひとは長けているなぁ、と。漢字とかなの微妙な使い分けにしても、そういう描写にぴたりと当てはまっているように感じられるし。
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