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何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

中村 文則

この本の所有者

24人が登録
195回参照
2015年10月14日に更新

書籍情報

ページ数:
197ページ
参照数:
195回
登録日:
2015/10/14
更新日:
2015/10/14

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内容紹介

施設で育った刑務官の「僕」は、夫婦を刺殺した二十歳の未決囚・山井を担当している。一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定するが、山井はまだ語らない何かを隠している―。どこか自分に似た山井と接する中で、「僕」が抱える、自殺した友人の記憶、大切な恩師とのやりとり、自分の中の混沌が描き出される。芥川賞作家が重大犯罪と死刑制度、生と死、そして希望と真摯に向き合った長編小説。
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📝 レビュー (あおみさんのレビュー)

評価:
5/5
レビュー:
世の中における自己の存在に対して一度でも疑問を抱いた者にとって、本書は救いに成り得ると感じた。
決して、物語が斬新なわけでもなく、またミステリー小説でないため見たこともないトリックが介在することもないのだが、人物描写がえげつない。(敢えてこうした表現にさせてもらう。)
彼らの生き方、考え、言葉がいちいち心に刺さり、ページを捲る手が止められない。
一度も経験したことのない世界なのだが、そこには確かにリアリティがあり、読者が存在している。いや、存在していたいと思わせるのだ。
主人公「僕」の恩師曰く『現在というのは、どんな過去にも勝る。生き物の連続である何億年の線という途方もない奇跡の連続は、全て今のお前のためだけにあった、と考えてもいい」
主人公曰く「人間と、その人間の命は別のように思う」
ぼやけていた個人の存在の必要性に光を照らす言葉。
常々、存在する意味について首を傾げ、死ぬことも生きることもできていない私に向けられた言葉。
途方もなく大きな何かに優しく、暖かく抱きしめられたような安心感。
自然と涙が浮かぶ、安心感。
私は今後、何度も本書を読むことになるだろう。その時は心が折れそうな時に支えてもらうためでなく、素晴らしい作品がここにあるということを確かめるために。

読書履歴

2015/10/14 197ページ

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