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ウエハースの椅子 (新潮文庫)

ウエハースの椅子 (新潮文庫)

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15人が登録
353回参照
2015年10月11日に更新

書籍情報

ページ数:
216ページ
参照数:
353回
登録日:
2015/09/04
更新日:
2015/10/11

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📝 レビュー (とくこさんのレビュー)

評価:
3/5
レビュー:
ウエハースの椅子。
読み終わってタイトルの秀逸さに震える。

恋人との満たされた日々。
けれど恋人には妻子があり、盲目的に信頼していた恋人への感情が徐々に揺らいで行く。

恋人と、子供の頃から絶えず感じている孤独に閉じ込められた静かな日々。
私は幸せなのだろう。
しかし、幸せの姿は見えているのに、それは触れれば壊れてしまう薄くて脆いウエハースの椅子。

最後、恋人も孤独なのだと分かってようやく恋人の事を信じられた。

読書履歴

2015/10/11 216ページ
2015/10/10 197ページ やさしい声で、そう尋ねる。私は、「いいえ」と、こたえた。「もう、会いたくないの」私は落ち着いていた。感情を言葉にしたというよりも、言葉が感情をつくるみたいだった。
2015/10/10 196ページ 日が昇りきったころ、恋人がやってきた。ドアチャイムが鳴り、ノックと、私の名前を呼ぶ恋人の声がきこえたが、私は身動きしなかった。するとふいに静かになり、数分後に電話が鳴った。しばらく鳴るままにしていたが、恋人に心配させるのは甘えたふるまいだと思えて受話器をとった。
2015/10/10 161ページ 「信じられない」私は何度もそう言った。「あなたにまた会えるなんて信じられない」と。
2015/10/10 152ページ 私は自分がたったいま恋人を疑ったことにおどろき、動揺している。信じきっていなければ、愛に意味などないことを知っていた。ポットに葉を入れてカップをならべる。やかんが蒸気を噴き出し始める。私は恐怖を感じる。信じきっていたことが、唯一の武器だったのだ。唯一の、そして無敵の。やかんが蒸気を上げつづけているのに、私は火を止めることを思いつかない。
2015/10/10 125ページ 「気をつけなさい。やけどしないようにね。あなたにやけどなんかさせたら、ママはあなたの未来の旦那様に申し訳ないから」それを聞くたびにわ私は怯えた。母の言葉は、まるで私のほんとうの居場所が、そこではない別の場所にあると言っているようにきこえた。私が未来の旦那様のもので、父や母は、私をそのみたこともないひとからあずかっているだけのように。
2015/10/10 104ページ 私の人生はときどき子供のそれのようだし、また別のときには老人のそれのようでもあるのだが、決して三十八の女のそれのようにみえない。私は閉じ込められていると感じる。恋人の心の中に、あるいは子供の私の頭の中に。
2015/10/10 100ページ 私はオーナーの眼鏡のつるばかりみていた。彼は最近つるを新しくしたのだ。それは飴色で、きゃしゃなつくりにみえる。オーナーは話しながら目を細める癖があるので、眼鏡はそのたびに鼻梁の上で小さく上下する。眼鏡は、私に父を思いださせる。
2015/10/09 59ページ ウエハースの椅子は、私にとって幸福のイメージそのものだ。目の前にあるのにーーーそして、椅子のくせにーーー、決して腰をおろせない。
2015/10/09 54ページ 東京に戻り、見慣れたマンションに着くと私は心からほっとした。旅はすばらしかったのに。
2015/09/13 34ページ 「僕が死んだら、あなたはかなしくないの?」かなしくないわ、と私はこたえた。昔、父に教わったとおりに。「死ぬのはかなしいことではないのよ」そういいながら、でも私はほとんど泣きだしそうだった。恋人に死んでほしくなかった。それでそう言った。でもあなたは死なないで、とを「馬鹿だね」恋人は小さく微笑んだ。私の頭を抱きよせて、音をたてて頬にキスをしてくれた。それは私の望んだ返事ではなかった。私は恋人に、心配はいらない、と、言ってほしかった。永遠に死なないことにするから、と。でも恋人は、そう言ってはくれなかった。勿論。
2015/09/13 33ページ 死は、私の目に、残された者の狂気として映った。

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ウエハースの椅子。
読み終わってタイトルの秀逸さに震える。

恋人との満たされた日々。
けれど恋人には妻子があり、盲目的に信頼していた恋人への感情が徐々に揺らいで行く。

恋人と、子供の頃から絶えず感じている孤独に閉じ込められた静かな日々。
私は幸せなのだろう。
しかし、幸せの姿は見えているのに、それは触れれば壊れてしまう薄くて脆いウエハースの椅子。

最後、恋人も孤独なのだと分かってようやく恋人の事を信じられた。

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