書籍情報
- ページ数:
-
272ページ
- 参照数:
- 291回
- 更新日:
- 2014/07/03
- 所有者:
-
あおみさん
内容紹介

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📊 読書進捗 (あおみさんの記録)
📝 レビュー (あおみさんのレビュー)
そういった経緯があることから、本書がただの恋愛小説ではなく、随所に巧みに散りばめられた伏線が数多ある言わば恋愛ミステリーの要素を孕んでいることは事前に知っていた。従って、読中も様々な点を訝りながら読み進めていたのだが、何一つ発見することなく幕を閉じた。
元来、私の小説の読み方というのが、特に何も考えずひたすらにその世界を体験する、といったものなので、推理に不向きなことは理解している。しかし、ここまで何にも気付けないとなると悔しさを通り越していっそ清々しい。私の読み方は一切ブレていないということで捉え、自己満足を果たしておこうと思う。
このような私なので、しっかりと巻末まで読み終えた後にすかさず本書の解説掲示板を閲覧した。
そこで色々な伏線があり、それらが巧みに隠されていたこと、また、隠すだけでなくその情報を提示しながらも誤った方向へと誘導していくミスリードも随所に散りばめられていたことを教わった。
そして皮肉というべきか、挑戦というべきか、上記の伏線やミスリードを仄めかすヒントが表紙の絵や、目次に隠されているという点が最も作者にしてやられた点だと思う。
真相を知った上で物語を思い返すと、私の中で本書は恋愛小説の類にはいない。完全なるミステリー小説で、加えて後味が至って悪い。いや、後味が悪いというのも違う気がする。一言で言えば、恐い。ホラー的な恐怖ではなく、極めて現実的で、自分の身にも起こりそうな、もしくは起こっていそうな恐怖である。
a-sideとb-sideは時系列の流れでの区切りではなく、同時並行の物語というのが本書の真相で、それを理解すると、一つの恐ろしい結論に終着する。
繭子(マユちゃん)は同時に2人の恋人を所有していたのだ。
この一文だけ読めば、何ら恐ろしくない、有り触れた事実だと思うだろうが、繭子という人物に対して初心(うぶ)で清楚な印象が強く根付いていたとしたらどうだろう。
裏切られたというよりもただひたすらに恐かった。私は。
自分が相手に与える印象をも操作し、そして自分の感情をも操作し、結果として相手の気持ちを翻弄する。
男の浮気よりも女の浮気の方が恐ろしいというが、正にその通りであった。
「男女7人物語」の一話を見て、「興奮しちゃった」と話す繭子を私は忘れられないと思う。
その回は女優が遠距離恋愛に焦れて、初めて浮気をする内容だったらしい。一体何に興奮したのか。自分が今いる状況と酷似していることに喜んだのか。浮気の内容に負けてられないと対抗心を燃やしたのか。詳細に語られることはなかったが、バレるかもしれないと怯えることなく浮気相手の家に行く繭子の大胆不敵さに慄いた。
a-sideでの主人公「夕樹」と、b-sideでの主人公「辰也」の両者ともに「たっくん」という呼称をつけ、呼び違えの可能性を早々に失くした用意周到さも恐ろしい。
確実に言えることは本書の主人公は間違いなく成岡繭子である。
イニシエーション・ラブ、通過儀礼の恋はもう既に済ましているものであり、恋人も同様であることを切に願う。
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