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切り裂きジャックの告白

切り裂きジャックの告白

中山 七里

この本の所有者

8人が登録
131回参照
2013年6月9日に更新

書籍情報

ページ数:
334ページ
参照数:
131回
更新日:
2013/06/09

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📝 レビュー (あおみさんのレビュー)

評価:
4/5
レビュー:
「連続殺人鬼 カエル男」において、その巧みな文章力とミステリーとしての盛り上がり、またサイコパスな殺人鬼で読者を震撼させた作者の最新作である。
前作が傑作であったため、多少の辛口評価になっているかもしれないことは予め述べておく。

途中までは最高だった。
遺体が見つかった以降の盛り上がりと警察たちの推測、そしてそれらが見事に崩れて行く様。加えて作中の警察や住民、さらには読者の頭にも浮かび上がってくる犯人の像と狂気。
これはカエル男以上に狂ったヤツが現れた…と思い、高鳴る鼓動を抑えきれないまま頁を捲る。
しかし、真犯人の動機は以外にも明確なものであり、「なるほど」と思えたものであった。
だからこそ、これまでの凶行と釣り合わない。どう考えてもその理由が殺人の動機となりえるだろうか、と違和感を覚える。
もっと曖昧模糊としていながら、輪郭はあり、だからと言って一般人には到底理解し得ないものであって欲しかった。
さらに、切り裂きジャックと名乗ったのはメディア受けを狙ったのと、女性限定の連続殺人に見せかける為だと真犯人である真境名陽子は陳述していたが、折角近代史上最も凶悪で恐怖によって型作られた「悪」を名乗るのならもっとそれらしくできたのではないか、と感じてしまう。
実際に起きたら恐怖で外も出歩けないだろうが。

本書は臓器移植を題材にしており、それにおける推進派と慎重派の議論が特に興味深い。
私も大学では生命に関わる学部に属し、翌年から医療関係者として勤務する。そんな中、本書の討論には興奮した。
自分ならどう考えるか、なるほど、いやしかし、などと実際に物語に入って行った。
作中の人物に会いたくなって物語につい入り込んでしまう経験はこれまであったが、自分がそこに参加し自分の意見を述べたいだとかもっとこの人の意見を聞きたいといった風で物語にのめり込んだのは初めてだった。

誰もが答えを出せない問題に対して作者が真摯に向き合ったことは、間違いなく感じられた一冊だった。



ネタバレ
鬼子母涼子が既に提供された息子 志郎の臓器に会おうと殺人を犯している。これは間違い。
志郎の臓器摘出手術を執刀した真境名教授が、自身の医療ミスを隠す為に犯した。これも間違い。
真犯人は真境名陽子。麻酔士である彼女は志郎の手術において麻酔薬を間違えた。そのミスが露呈される前に提供された臓器を全て摘出したかった。

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