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横道世之介 (文春文庫)

横道世之介 (文春文庫)

吉田 修一

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25人が登録
328回参照
2013年4月3日に更新

書籍情報

ページ数:
467ページ
参照数:
328回
更新日:
2013/04/03

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📝 レビュー (あおみさんのレビュー)

評価:
5/5
レビュー:
本書は珍しく映画を先に見てからの読書となった。そのため世之介のキャラクターも祥子の話し方も、予め頭に用意されていたので文章が言葉として入りやすかった。
本書を分類するとなれば「青春小説」だろう。横道世之介という平凡な一人の学生の1年間を描き、時には彼に関わった人物たちのいまを織り交ぜることで世之介が彼らの心にしっかりと残る存在だったということを物語る。
しかし「青春小説」と言えば、例えば新歓で突拍子もないことを言い孤立する学生に思わず惹き寄せられたり、仲間と協力し切磋琢磨することで何かを成し遂げたり、彼らなりの正義感から何かの事件を解決したり、小説ならではと言える現実味のない出来事に巻き込まれたり…
そういったある種の「非現実」をイメージしていた私にとって本書は、とにかく「現実」であった。
世之介のような人物は確かにいるし、出会う人物たちもさすがに加藤のような同性愛者は身近にはいないが、できちゃった婚で大学を中退したというのも比較的よく聞く。だから少し拍子抜けというか物足りなさは感じるのである。
しかしなぜだろう。世之介が非常に魅力的に見える。それはもしかしたら映画という視覚的効果もあるのかもしれない。文章だけでは伝わらない彼の良さがあったのかもしれない。
彼のようになりたいとは思わないが、彼のような友達に出会えていたら私はそれを誇りに思えただろうと思う。
「自分は人を傷つける程近付いたことはないのだ」
と世之介は言っていたが、世之介には「傷をつける」という行為そのものが似合わない。彼には攻撃的要素が見当たらない。知らぬ間に空気を和ませ、相手を苛立たせることはあるが、相手はそれを妥協してしまう。
これは世之介の人間の良さが滲み出ている結果だろう。

とにもかくにも心の和む一冊である。
是非、映画と一緒に手にとってもらいたい。

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