
内容紹介

📝 レビュー (あおみさんのレビュー)
私の愚かな語彙力ではここまでしか言い表せられない。
しかし、本書にはもっともっと悲しさや幸せ、苦悩が詰まっている。
一人の女性に心酔したある崇高な男性、それがウェルテルだ。
彼は若い。恋愛に悩み、苦しみ、傷つき、これらは若さ故の過ちだ。いや、過ちという言葉は的確でない。
若さ故の当然の感情なのだ。
誰しもが身を悶えさせるような、心臓を引き抜かれるような、血が歓喜しているような、幸福と苦悩を味わったことだろう。
ただ、そのどうしようもない感情は「死」に繋がらなかった。ウェルテルは恋愛と死の間の経路が生まれながらにして、神によって既に敷かれていた。ただそれだけなのだ。
つまり、誰にでも「死」の機会はあった。
それを理解する勇気や、そこに踏み出す心構えが足りなかっただけ。ただそれだけなのだ。
本書を悪評する者は、本書を自殺を推奨、または賞賛していると述べる。
しかし、私は本書のテーマはそこにあるのではない、と考える。
恋愛の苦悩故の自殺など、ただの結果に過ぎない。なぜなら、誰しもに機会はあった訳だし、見渡せば今日も誰かが自殺しているからだ。
主題はそこではない。
本書の主題は、「普遍的であり、また特別的な恋愛」にある、と思うのだ。
恋愛の一つや二つなど誰もが経験し、そして誰もがその辛さと悦びを経験してきた。
したがって主題は「恋愛の苦悩」ではないのだ。
私が述べたいのは、恋愛とは当然、誰もが経験するものでありながら、誰にとっても特別で周囲の干渉を一切許さない、ということなのだ。
本書の主人公がウェルテルだったから、あのような結果になったのではなく、恐らく恋愛の苦悩故の自殺者など、探せばごまんといるだろう。年間自殺者三万人超の現代にとって、そんな理由など珍しくない。
しかし、本書に描かれた考え方や行動はウェルテルだけのものだ。もちろん、ロッテの思慮も、アルベルトの言動も。
その結果に、ウェルテルの自殺が用意されていた。ただそれだけなのだ。
万人への共通性と個人への特別性を持ち合わせたこの物語を、私は大切にしたいと思う。
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