
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
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「悲しみに胸を塞がれてはいたが、残酷なことにぼくにとってこれは突然の不幸などではなく、世界というものがそうあるべき唐突さを、またあらためて剝き出しにしたにすぎなかった。」
不条理劇に終始している。村上春樹の小説にでてきそうないまいち煮え切らないクール風の主人公が、罪の意識を背負って許しを求めて戦場を渡り歩く。暗殺対象の恋人に会いたいから。
なぜ彼女でなければならなかったのか?なぜ母親の人生で主人公は登場人物にならなかったのか?虐殺の文法って具体的に何?最後に主人公がアメリカで虐殺劇を発動させた理由は?みたいな疑問が残る。だがしかし、多くの問題については、理由はない。だから不条理劇。あえて言えば「世界というものがそうあるべき唐突さを、またあらためて剝き出しにしたにすぎなかった」からで、「太陽がまぶしかった」のと同じ程度の理由だ。
その意味では、カフカ的。エンターテイメント性を持った自分の存在も含め、世界は無慈悲で不条理だという現実を突きつけていた。
「仕事だから仕方ないという言葉が虫も殺さぬ凡庸な人間たちから、どれだけの残虐さを引き出すことに成功したか、きみは知っているのかね」
ところで小松左京がこの小説を落選させた理由を見て感じた。虐殺の文法がなんだかわからないけど、フリーソフトを扱うみたいに簡単に扱える。ここに説明求めるのは間抜けじゃないか?だって、私たちはリモコンのスイッチを押せば、TVのチャンネルは変わることを理解しているわけだから。


久々に骨太なSF。
冒頭の装備品などの細かい描写には引き込まれました。
コンセプトもストーリー運びも個人的には好きですが、終盤がちょっとなーと言う感想。
ただ、この方の他の作品も呼んでみようと思った次第。


人間の中に潜む虐殺器官。それに対する言語学の説明は去年学んだということもあって、非常に興味深かった。

戦争がそこに在る以上、その場に正義は有り得ない。例えば愛国心や家族のため、戦争を吹っかけられたからなど、どういう名目があろうともそれは正義でも戦う理由でもなく、全ては人殺しの理由だ。例えその理由が、ジョン・ポールの掲げる「テロの抑制」だったとしても。
この一冊がSF大賞を受賞することなく、もしくは受賞したという事実を知らないまま読んだとしたら、私は本書をSF小説だと断言できなかっただろう。それほどまでにリアリティがあり、緻密に内容が織り込まれ、読者の想像心を沸き立たせる。読中幾度となく目を閉じ、そこに広がる惨状、日常、感情を思い浮かべたことだ。もし本当にこの科学技術が確立されたとしたら戦争が起こってしまうのではないか、もし本当にこんな便利すぎる世の中になってしまったら人殺しが日常茶飯事になってしまうのではないか、私は本書を読んでいる間恐怖を感じなかったことはなかった。ジョン・ポールは自身の言語研究から虐殺を導くある文法を見つけ出した。もし本当にこんな文法があったとしたら…
しかし、物語として充分に楽しめたことも書かなくてはならない。主人公は国家の暗殺部隊の一員で、所謂プロであるのに、恋心によって自身の立場をあやふやに感じる。また、科学技術が発展した結果、この殺人は自分の感情なのか、どうすれば罪を償えるのか、赦してもらえるのかを常に考える。そういう言わば、生の思想が感じられ共感できた。また敵対する男にも罪があり、それは赦されざれないと理解していた。その罪とはサラエボテロの際に本人は不倫中で、妻と子を愛人の膣に浸っている間に失ったというものだ。その後、先ほど記した虐殺の文法を見つけ出し、9.11のようなテロを二度とアメリカにさすまい、愛人が住むアメリカだけは多数の犠牲を払ってでも抑えてみせる、とテロを仕掛けてくる危険性を孕んでいると考えられる発展途上国に赴き、その文法を用いて話し、書に記し、広告として流した。なんと悲しく、稚拙な考えだろうか。しかし、人を愛するという気持ちはやはりこうまで人の考えを極端にさせるものなのだと再認識した。
最後に主人公がジョン・ポールの残した虐殺器官(ルツィア曰く言葉は器官)を使って虐殺を行ったのか、主人公はなぜ母親の物語の中で主人公となり得なかったのかなど疑問は残るが、不思議とそれはそういうものなのだと納得?できる。私なりの考えを言えば、最後に主人公が虐殺を起こしたのはジョン・ポールとほぼ同じ理由ではないか。そこに「テロを未然に防ぐ」という考えはないが、ルツィアが生きていた世界を何者にも壊させないと思ったのではないか。またしても人を愛する気持ちは人を狂わせる。そして狂っていることを本人は大体が知ることはない。
とにもかくにも良い一冊だった。



ハードな近未来SF





























































