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カシオペアの丘で 下 (講談社文庫)

カシオペアの丘で 下 (講談社文庫)

重松 清

5
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2件のレビュー

この本について

二十九年ぶりに帰ったふるさとで、病魔は突然暴れ始めた。幼なじみたち、妻と息子、そして新たに出会った人々に支えられて、俊介は封印していた過去の痛みと少しずつ向きあい始める。消えてゆく命、断ち切られた命、生まれなかった命、さらにこれからも生きてゆく命が織りなす、あたたかい涙があふれる交響楽。

みんなの評価

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レビュー

mak246
mak246
2010年5月読了
許すこと許されること。そして生についてと深い作品だった。人生をどのように歩み、過ちとどのように折り合いをつけ、最後はどのように幕を閉じるのだろうか。
そんなことを読了後に考えさせられる。

40歳を目前に癌を宣告されたシュンが子供の頃からの「傷」との折り合いをつけていく過程を軸に描かれ、その想いや姿勢には共感する部分も多くついつい感情移入してしまう。色々と背負ってしまってはいたが、自分・家族、そして友人もが納得できる最後を迎えられたのは幸せな終わりだったのではないだろうか。

作品自体、後半は一気読みするほど引き込まれるものだったけど、本作品で提起しているテーマだとはいえ「許す」に拘りすぎてた感もあった。その中だからこそユウちゃんというキャラクター性が欠かせなかったのかもしれないが。。しかし、このユウちゃんのキャラクターは絶妙だった。特に第15章のユウちゃんの語りはなんとも良い味があって、この作品をより際立たせている一因となっている。

そして本作で舞台となる北海道にある架空の田舎町、そしてカシオペアの丘の描写はもちろんのことだし、登場人物たちのが発するら台詞のどれもが素晴らしい。その意味でも魅力的な作品だった。
それだけに安易に中途半端な映像化だけは避けてほしいと願う。。
あおみ
あおみ
2012年11月読了
誰かの手によって作られた「小説」を文章として読んでいるというより、実際にその場にいて彼ら幼馴染の話を聞いているような気がした。トシが強がって本音を隠し、ミッチョがそれを見透かして冷やかし、シュンが微笑んで、ユウちゃんがとぼける。まるでこの4人を昔から知っていたかのように、彼らの言動一つ一つが素直に心に染みてくる。
シュンの人生は着々と確実に終焉に向かっていく。悲しきことか、嬉しきことか「死」が目前にあると、周りの人も当人も正直になっていく。そうして語られていく彼らの過去、現在、未来を一緒に受け止め、私も私の人生を振り返り、そして彼らの考えを取り入れる。上手く表現できないのだが、この一冊を読むことはこれまでの読書とどこか違うような気がする。「読む」という客観的なものとは違い、「参加する」という主観的なような…いや、これも違う気がするな。
『なにかを許したくないと思いながら生きる人生は寂しい。』『なにかを許せる人は優しい人だと思うんです。』私もいつか誰かを許して誰かに許されるんだろうか。そんな充実した幸せな人生を送ることが出来たなら、私は間違いなく「生きててよかった」と思えるだろう。

読書ステータス

読了 19人
読みたい 2人

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