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空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

池井戸 潤

この本の所有者

50人が登録
200回参照
2010年9月15日に更新

書籍情報

ページ数:
448ページ
参照数:
200回
登録日:
2010/09/03
更新日:
2010/09/15
所有者:
mak246 mak246さん

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📝 レビュー (mak246さんのレビュー)

評価:
5/5
レビュー:
実事件を題材に巨大企業のリコール隠しというテーマを扱いながらも、各キャラクターの背景や心情を丁寧に描いたリアルな人間ドラマ。財閥グループ内に於ける勢力抗争や同社内での部署間の軋轢、資金を巡っての銀行との駆け引きなど、経済小説としての要素は保ちながらも、非常に読みやすい表現であったりコミカルな部分もあったりするしでスムーズに小説の世界へと引き込まれていった。

ストーリー展開では赤松社長視点だけでなく、大企業に勤めるサラリーマンの立場や銀行の窓口担当者等々の視点からもそれぞれの関係性や動きが良く分かるように描かれていて、如何に赤松社長が窮地に陥っていくのか、そしてどのように中小企業の社長が巨大企業に立ち向かっていくのかを最大の見所になるように盛り上げられている。その過程で何だかんだの思惑・偽装・出世志向・スクープ等が渦巻くものの、次々に巻き起こるトラブルに翻弄されながらも家族、社員、遺族のために真実へ突き進んでいく赤松社長の熱い姿を描いた娯楽大作だったのではないだろうか。。。

一方の事件性では、実際の事件でもこのようなコトが行われていのたのかと思うと寒気がしてしまう。もちろん、この小説はフィクションだろうから全く同じ背景ではないだろうが、国交省への虚偽報告等のリコール隠しは本書のように企業営利や個人の利害を優先したが故の結果だったのだろうから。。。
しかも、たかが8年前の事件で既に世にもコンプライアンスって言葉が飛び交っていた時分に企業側のモラルがこの程度だったとは。。。確かにキレイごとだけでは済まない事情はどこの会社でもあるのだろうが、もう少し賢い経営判断ができる人はいなかったのだろうか…。本書にもよく出てくる"コンプライアンス"、その言葉を自分たちの都合の良い解釈で盾や逃げとして使われてるのは小説内だけではないので、現実社会でもモラルが低下しないような企業努力はしてほしいものだとつくづく思う。

…とまぁ、色々な意味で面白い作品だったし、何よりもこの内容にしてタイトルを「空飛ぶタイヤ」としたセンスも抜群な傑作であった。

読書履歴

2010/09/15 448ページ
2010/09/11 334ページ
2010/09/11 206ページ
2010/09/10 117ページ

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