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ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫)

ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫)

垣根 涼介

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1件のレビュー

この本について

呪われた過去と訣別するため、ケイたち三人は日本国政府に宣戦布告する。外務省襲撃、元官僚の誘拐劇、そして警察との息詰まる頭脳戦。ケイに翻弄され、葛藤する貴子だったが、やがては事件に毅然と対峙していく。未曾有の犯罪計画の末に、彼らがそれぞれ手にしたものとは―?史上初の三賞受賞を果たし、各紙誌の絶賛を浴びた不朽の名作。

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レビュー

ぼんぼん
ぼんぼん
2008年8月読了
決して語られる事の無かった、日本人のもうひとつの戦後史。
ぬくぬくと生きてた日々に冷や水ぶっかけられました。
これはフィクションなんだ!フィクションなんだ・・・って何度も自分に言い聞かせたけれど、それでも読むのが本当に苦しかった。しんどかった。
読書しててこんな気持ちは久しぶりだ。
 
政府の移民政策にのせられてブラジルへ渡った日本人の辛酸を嘗め尽くした激動の人生と、その当事者や二世たちの国を向こうに回した壮大な復讐劇。
復讐劇の過程はスケールも大きくて冒険小説&ハードボイルドチックでドキドキワクワクしたけれど、この国が昔しでかした棄民政策に比べたら・・まっすぐすぎて涙が出ました。こんな奇襲でしか声が届かないのか。
勇気とは・・・。
自分がエトウやケイの立場だったら?自分が貴子の立場だったら?
そして自分が国側の立場だったら、果たして声を上げることができただろうか。。。考えさせられました。
 
わたしの母の小さなころ、幼馴染の一家がこの移民政策でブラジルへ渡ったそうです。いつか日本へ帰ってくるからという話が、ついぞ一度も故郷へ戻ることは無かったそう。
身近で当事者を見ていた母でさえ、その政策の実態までは知らなかった。
その話を聞いて、この本を読んで、なんとも暗澹たる気持ちになりました。
顔も見たことがないけれど、母の幼馴染の一家を思うと急にこの小説の中の出来事が実感を伴ってきて、怖くて心配で、こんな事実知りたくなかった!って思ったり、でも一生知らないままじゃなくて良かった、とも思ったり。とにかくいろんなことを思いながら読みました。
逆境の中で、もがきながら生き抜いたあのころの日本人の姿に頭の下がる思いです。日本の歴史を思い返すこの時期にこの本を読めてよかったです。

読書ステータス

読了 6人