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レビュー

人間不信というよりは人間に対して信頼を置けない性癖をもち、そこから他人の気を伺うばかりで自ら選択を下すことができず、道化に徹さずにはいられない人生を送る葉蔵という人物が主人公である。これは神様の悪戯としか表せないことに、葉蔵は非常に美しい容姿の持ち主で女に気に入られる特技を持つ。そんな彼が唯一の友人や、世話係に裏切られ、家族との繋がりもなく、信じた女との心中も自分だけが助かってしまったりしたことから、酒に溺れ末路は薬物中毒者となり入院させられ、人間として堕落していく人生を辿る。しかし、彼は至って臆病だ。私はそう感じた。同性に対して、尊敬されることを恐れ、慕われることを避けながら、異性に対してはすぐに取り込もうとする。それを自分の駄目な性癖だと言ってはいるが、彼はそれを自らの武器としているのではないか、と感じる。二者択一の選択もできない、だから自分の意見を言うことができないそんな自分は男に疎まれる。しかし、女には優しくレディファースト的に写る。そういう心理を天性として理解していたのではないだろうか。だから彼は臆病なのだ。
内容ではなく感じたことが一つあり、文書の読み易さがそれである。約90年も前の作品が、こうもスラスラと読めるもは思わなかった。
もし、葉蔵の人生、考えに自分と通じる箇所があったなら、本書は人生における一冊もなっていただろう。自殺は最も醜い行為だと考える私にとって、その行為を数回繰り返す葉蔵は最も遠い存在であり、最も共感できない人間であった。しかし、小さい頃から自らの生の必要性、意義を信じられなくなった人間の人生とはかくも悲しいものなのか、とリアルに感じさせられた。
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