
みんなの評価
レビュー
その意味では、家族愛をテーマに描いた「永遠0」と同じような手法を用いて、友情をテーマに描いた作品とも言えなくない。
ま、単に"友情"だけでもないのだが。。。。
とは言っても、決して二番煎じだけで終わるような作品ではない!
戸田勘一という男の半生を追いながら、その節目節目に絡んでくる彦四郎との友情物語。それだけならどこかの青春小説にもなりそうだが、本作の舞台を江戸時代に設定したことから、その時代における庶民の生活風景や社会事情、そして当時の武士の生き様など、今回もその世界観を追求したリアリティある描写で非常に読み応えがある!!
また、その辺の時代考証も説明調ではなく、2人の男の生き様を描く中に織り交ぜたり、勘一の出世の要因と絡めたりするなどで巧く表現している点が好ましい。
ただ、彼の取った行いは時代小説としても"できすぎ"って感は少しあるかも。。。。
表題である「影法師」に相応しく実にすばらしい人物だと思うが、ここまで自己犠牲を払って他人のためだけに尽くす人物像は美しくあるものの人間味に欠けて見えてしまうのは穿った見方だろうか。
「永遠の0」の宮部久蔵の確固たる己の信念には説得力があり納得できたのだが、彦四郎の「想い」には時代が違うと言えばそれまでではあるものの、そこまでの共感はできなかったかと。。。。
それと、巻末の袋綴じについて。これは賛否両論だろうが、個人的には単行本時の判断が正しかった気がしないでもない。
ストーリーの中にも伏線はあったのだから、最後に補足説明をせずとも読者の感受性に委ねるだけの余韻があった方が良かったかも。
…作品の出来が良かっただけに、ちょっと高望みしすぎなのかもしれないが。。。。

幼い時に身分により父を亡くした下士の勘一と、それを支えた竹馬の友の中士彦四郎の話。
勉学にくわえ、剣の腕も隣に出るものはいない彦四郎に憧れ幼少時代を過ごす勘一。
下級身分だからこそ、階級社会に不条理を抱き、自分のためでなく、藩のためにそれを変えたいと強い思いを抱いていた。そんな勘一を藩にはなくてはならない人物だと思い、自分を犠牲にして誰にもかたらず守っていた彦四郎。
下士からは考えられない出世をする勘一に対して、不名誉の烙印を押され、あげく狼藉をはたらいて逐電した彦四郎。しかし、彦四郎は勘一のためにわざと不名誉の傷をおい、友をたて、また友とその妻を守る為に狼藉を働いたふりをして追手から勘一を守っていた。
話の流れは勘一の出世と彦四郎の堕落が反比例して展開され、最後に彦四郎の死後、生前の彦四郎の行動の真意が明らかになって行くというもの。
本当に強い信念を持つ者には、自然と道が開け、その陰にはかならず支えてくれている人がいるということ。

20131205第17刷発行
講談社
講談社文庫
Amazon古書
20100500講談社刊
20160730入手
¥648+税
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