
この本について
藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ? 傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された......」それは、血で血を洗う凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。『黒い家』で圧倒的な評価を得た著者が、綿密な取材と斬新な着想で、日本ホラー界の新たな地平を切り拓く、傑作長編。
みんなの評価
3.7
5
4
3
2
1
レビュー

よくあるクローズドサークルもの。
目覚めたら見知らぬ土地におり、理解が追いつかぬまま死が目前に登場し、これまでの怠惰な日常を振り返りながら生に執着する。
展開はこれまでと相違なく、上記の通りであった。こういう場合、ヒロインが総じて怪しく多くの場合、当ゲームを支配、運営する側の人間である。そして、本作もそう。
各書評によって傑作と称される本書であっただけに残念である。
唯一、体裁がことなったのは舞台における造り込みか。物語に直接関わっていない情報をも提示し、現実感を増強させている。ただ、日本であるならまだしもオーストラリアにおいて造り込みがどれだけ成されたとしても、海外に疎い者にとってはどれもが幻想である。
最も残念だった点を最後に挙げる。著者はホラー小説界において、ある作品で確固たる地位を築いている。それだけに、本作が描く迫り来る恐怖の薄さには驚いた。いわゆるドキドキハラハラがないのである。
心霊的恐怖と悪意的恐怖とが異なるためなのか、素人には分からないが、人を喰らうグールが近づく様を至ってフラットな感情でやり過ごせたことには、少なからずショックを感じた。
目覚めたら見知らぬ土地におり、理解が追いつかぬまま死が目前に登場し、これまでの怠惰な日常を振り返りながら生に執着する。
展開はこれまでと相違なく、上記の通りであった。こういう場合、ヒロインが総じて怪しく多くの場合、当ゲームを支配、運営する側の人間である。そして、本作もそう。
各書評によって傑作と称される本書であっただけに残念である。
唯一、体裁がことなったのは舞台における造り込みか。物語に直接関わっていない情報をも提示し、現実感を増強させている。ただ、日本であるならまだしもオーストラリアにおいて造り込みがどれだけ成されたとしても、海外に疎い者にとってはどれもが幻想である。
最も残念だった点を最後に挙げる。著者はホラー小説界において、ある作品で確固たる地位を築いている。それだけに、本作が描く迫り来る恐怖の薄さには驚いた。いわゆるドキドキハラハラがないのである。
心霊的恐怖と悪意的恐怖とが異なるためなのか、素人には分からないが、人を喰らうグールが近づく様を至ってフラットな感情でやり過ごせたことには、少なからずショックを感じた。
読書ステータス
読了
35人
読みたい
1人