この本について
夏目漱石の遺作を書き継いだ『続明暗』で鮮烈なデビューを果たし、前代未聞のバイリンガル小説『私小説from left to right』で読書人を瞠目させた著者が、七年の歳月を費やし、待望の第三作を放つ。21世紀に物語を紡ぐことへの果敢な挑戦が、忘れかけていた文学の悦びを呼び招く。
みんなの評価
5
5
4
3
2
1
レビュー
『日本版・嵐が丘』という設定に興味を持って一気読み。
本家の嵐が丘が「激しさ」ならば、この作品は「悲しみ」が強く印象に残りました。
悲惨な生い立ちから成り上がり、米国で巨万の富をつかんだ東太郎。
その太郎が生涯愛したただ一人の女性、よう子。
よう子を思って思って愛し続けて、殺したいと思うほどどうしようもなく大好きで、
よう子もそんな太郎を憎みながら愛し続けて、
ってなんか文章にするともぅめちゃくちゃだけど、
そんなめちゃくちゃなまでに惹かれ合った二人なのに、結果的に結ばれることはなかった。
アメリカに渡り、血のにじむような努力をして富も名声も手に入れた太郎なのに、
生涯大切に抱き続けたこの初恋だけは、最後までかなうことがなかった。
身分違いの恋も憎しみも生い立ちもなにもかも、全部ひっくるめて
ただ好きな人と一緒にいたかった。
ただそれだけなのに。
身分や時代の流れや宿命やらが太郎の前に立ちふさがるたびに、
行間から悲しみがほとばしってきて、胸がつぶれそうでした。
激動の歴史の中に、戦後の華やかさの陰に、ひっそりと取り残された幼い恋。
ずどん。とくる物語でした。
本家の嵐が丘が「激しさ」ならば、この作品は「悲しみ」が強く印象に残りました。
悲惨な生い立ちから成り上がり、米国で巨万の富をつかんだ東太郎。
その太郎が生涯愛したただ一人の女性、よう子。
よう子を思って思って愛し続けて、殺したいと思うほどどうしようもなく大好きで、
よう子もそんな太郎を憎みながら愛し続けて、
ってなんか文章にするともぅめちゃくちゃだけど、
そんなめちゃくちゃなまでに惹かれ合った二人なのに、結果的に結ばれることはなかった。
アメリカに渡り、血のにじむような努力をして富も名声も手に入れた太郎なのに、
生涯大切に抱き続けたこの初恋だけは、最後までかなうことがなかった。
身分違いの恋も憎しみも生い立ちもなにもかも、全部ひっくるめて
ただ好きな人と一緒にいたかった。
ただそれだけなのに。
身分や時代の流れや宿命やらが太郎の前に立ちふさがるたびに、
行間から悲しみがほとばしってきて、胸がつぶれそうでした。
激動の歴史の中に、戦後の華やかさの陰に、ひっそりと取り残された幼い恋。
ずどん。とくる物語でした。
読書ステータス
読了
3人