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「社会調査」のウソ

「社会調査」のウソ

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(3.0)
1人が登録
19回参照
2025年11月12日に更新

書籍情報

ページ数:
228ページ
参照数:
19回
登録日:
2025/11/12
更新日:
2025/11/12

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📝 レビュー (餼羊軒さんのレビュー)

評価:
3/5
レビュー:
◽️雑感
 統計に関はる各種バイアスの網羅的説明は、啻にモデル構築に役立つのみならず、認知バイアス事典としても活用し得よう。

 不正や誤謬を「ゴミ」と語気を強めて難ずるは著者の憤りならむか。本書は社会調査の杜撰なる実態を具体的事例を挙げて辛辣に批判しつつも、其は社会調査自体の意義を否定するものにはあらず、寧ろ其信頼性と質とを高むる為の建設的提言を含んでゐる。

◽️不正確なる大要
 筆者は、世に出回る「社会調査」の過半数が「ゴミ」であると云ふ過激なる主張を展開し、其実例を挙げて調査の欺瞞性を批判してゐる。是等の「ゴミ」は、学者・政府や官公庁・社会運動家・マスコミなど、多様なる主体に依て生み出され、引用や参照を通じて新たなゴミを増殖せさせると云ふ始末の悪さがある。

 本書の目的は、社会調査の結果に不可避的に存在する「バイアス(偏向)」を、多くの事例を通じて読者に認識せさせ、同様の過ちを避くる為の「リサーチ・リテラシー」を身につくることを推奨することである。

 各主体が生み出す「ゴミ」の例として、学者の世界では、データや統計分析に強くない指導者の下で杜撰なる調査が行はれたり、研究予算の確保の為に「後追因果」的な調査結果が出版せられたりする。又、官公庁の調査には、比較対象が存在せぬ調査や、特定の政策を支持する為の意図的なるデータ操作が見られ、税金の浪費となってゐる。社会運動グループの調査も、「数だに集まればよい」と云ふ思想に基づき、偏向した結果をマスコミに拡散せさせる傾向がある。

 マスコミは、数字や話題の面白さを重視し、外部の調査を精査せず鵜呑みにして垂流すことが多い。更に、見出しや写真に依る印象操作や、回答者の決断を誘導する質問設計を用ゐて、特定の意見を押しつけむとすることが指摘せられてゐる。

 続いて、調査手法に於る様々なる欠陥が論じられ、人間は過去の出来事を忘れ、都合良いやうに「嘘をつく」動物であると云ふ前提を無視してはならないと強調せられる。又、統計的なる知識が無い故に、単なる相関関係を直ちに因果関係だと結論づくる「誤り(逆の因果・見せかけの相関・隠れたる変数・単なる偶然など)」が後を絶たない。殊にサンプリングに於ては、数が少ない・母集団が不明確・確率標本でないなどの理由から、多くの調査が代表的な意見を反映してゐないことを指摘する。

 筆者は、斯くした「ゴミ」の氾濫を防ぐべく、マスコミ各社に対し、調査方法の確認・認証や結果の妥当性を判断する「リサーチ・チェック機関」の創設を提案し、研究者やメディア間での調査データ公開の義務化を愬へてゐる。自今は情報を得る能力よりも、「ゴミ」を見分け、捨つる能力(リサーチ・リテラシー)が重要になると論を結ぶ。

読書履歴

2025/11/12 228ページ 読了

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 不正や誤謬を「ゴミ」と語気を強めて難ずるは著者の憤りならむか。本書は社会調査の杜撰なる実態を具体的事例を挙げて辛辣に批判しつつも、其は社会調査自体の意義を否定するものにはあらず、寧ろ其信頼性と質とを高むる為の建設的提言を含んでゐる。

◽️不正確なる大要
 筆者は、世に出回る「社会調査」の過半数が「ゴミ」であると云ふ過激なる主張を展開し、其実例を挙げて調査の欺瞞性を批判してゐる。是等の「ゴミ」は、学者・政府や官公庁・社会運動家・マスコミなど、多様なる主体に依て生み出され、引用や参照を通じて新たなゴミを増殖せさせると云ふ始末の悪さがある。

 本書の目的は、社会調査の結果に不可避的に存在する「バイアス(偏向)」を、多くの事例を通じて読者に認識せさせ、同様の過ちを避くる為の「リサーチ・リテラシー」を身につくることを推奨することである。

 各主体が生み出す「ゴミ」の例として、学者の世界では、データや統計分析に強くない指導者の下で杜撰なる調査が行はれたり、研究予算の確保の為に「後追因果」的な調査結果が出版せられたりする。又、官公庁の調査には、比較対象が存在せぬ調査や、特定の政策を支持する為の意図的なるデータ操作が見られ、税金の浪費となってゐる。社会運動グループの調査も、「数だに集まればよい」と云ふ思想に基づき、偏向した結果をマスコミに拡散せさせる傾向がある。

 マスコミは、数字や話題の面白さを重視し、外部の調査を精査せず鵜呑みにして垂流すことが多い。更に、見出しや写真に依る印象操作や、回答者の決断を誘導する質問設計を用ゐて、特定の意見を押しつけむとすることが指摘せられてゐる。

 続いて、調査手法に於る様々なる欠陥が論じられ、人間は過去の出来事を忘れ、都合良いやうに「嘘をつく」動物であると云ふ前提を無視してはならないと強調せられる。又、統計的なる知識が無い故に、単なる相関関係を直ちに因果関係だと結論づくる「誤り(逆の因果・見せかけの相関・隠れたる変数・単なる偶然など)」が後を絶たない。殊にサンプリングに於ては、数が少ない・母集団が不明確・確率標本でないなどの理由から、多くの調査が代表的な意見を反映してゐないことを指摘する。

 筆者は、斯くした「ゴミ」の氾濫を防ぐべく、マスコミ各社に対し、調査方法の確認・認証や結果の妥当性を判断する「リサーチ・チェック機関」の創設を提案し、研究者やメディア間での調査データ公開の義務化を愬へてゐる。自今は情報を得る能力よりも、「ゴミ」を見分け、捨つる能力(リサーチ・リテラシー)が重要になると論を結ぶ。

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