
みんなの評価
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レビュー

zooko012
2015年5月読了
「私を離さないで」は自分がここ10年読んだ小説の中で断トツ一番!と思うくらい本当に偏愛している。というわけで、久しぶりのカズオイシグロのこの最新長編、発売日を指折り数えて楽しみにしていたわけだが。。。
舞台設定はアーサー王の時代。自分たちの記憶が失われているのではないかと疑った老夫婦が旅に出る。戦士、鬼、竜、妖精など、ファンタジー(幻想)小説の枠組みを借りつつ、人・歴史にとっての記憶、忘却の意味、愛を真正面から語っている。最後の数十ページは流石に面白いし、印象的なシーンはいくつもある。題材や語り口は悪くはないし、全体の薄ぼんやりとしたベージュグレーのような世界観は捨てがたい。
とはいえ、「私を離さないで」のような全編、主題と世界観が一体となって、読み手の心を圧倒的に揺さぶるような何か、は残念ながら感じられなかった。いつも興味のある本は発売日に読み切る自分がここまで時間がかかってしまったのが何よりの証左だ。逆説的ではあるが、「私を離さないで」が本当に奇跡のような小説であったことを思い知らされた。
舞台設定はアーサー王の時代。自分たちの記憶が失われているのではないかと疑った老夫婦が旅に出る。戦士、鬼、竜、妖精など、ファンタジー(幻想)小説の枠組みを借りつつ、人・歴史にとっての記憶、忘却の意味、愛を真正面から語っている。最後の数十ページは流石に面白いし、印象的なシーンはいくつもある。題材や語り口は悪くはないし、全体の薄ぼんやりとしたベージュグレーのような世界観は捨てがたい。
とはいえ、「私を離さないで」のような全編、主題と世界観が一体となって、読み手の心を圧倒的に揺さぶるような何か、は残念ながら感じられなかった。いつも興味のある本は発売日に読み切る自分がここまで時間がかかってしまったのが何よりの証左だ。逆説的ではあるが、「私を離さないで」が本当に奇跡のような小説であったことを思い知らされた。
イシグロの10年ぶりの新作はファンタジーということで期待。アーサー王、円卓の騎士ガウェイン、魔術師マーリン、竜とくれば、嫌でもわくわく。息子が住むという、あるいは老夫婦が渡ろうとする島はアヴァロンか?しかしそれらは外側だけであり、ファンタジーというのも形だけ。人間は怒りや悲しみや恨みを忘れたほうが世の中が平和になる。特に夫婦は忘却と許しが必要。そういう事が書かれていたのだろうか?どういう結末なのか、最後の部分の意味が分からない。本質的にはラブストーリーであるとされながら、私には最後の部分でどうしてもラブストーリーには思えない。また翻訳の土屋さんは好きだが、これに関しては今いち。老夫婦の会話がしっくり来ない。ファンタジー関連の事柄は知識や慣れも必要だから、得意分野ではなかったかも?高い評価を得ている本作だが、ファンタジーとして期待した私には退屈だった。
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