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バルザックと小さな中国のお針子

バルザックと小さな中国のお針子

ダイ・シージエ

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1件のレビュー

この本について

文化大改革の嵐が吹き荒れる1971年、医者を親に持つ僕と羅は、反革命分子の子として再教育のため山奥深くに送りこまれた。僕は17歳、羅は18歳だった。厳しい労働に明け暮れるなか、僕らは村に唯一ある仕立屋の美しい娘、小裁縫に恋をした。あるとき僕らは、いまや禁書となっている西欧の小説を友人が隠し持っていることを知る。壮大な愛や冒険の物語に僕らはすっかり夢中になり、これに刺激を受けた羅は、小裁縫にバルザックの小説を語り聞かせる。二人は次第に親密になっていくが、本によって自分たちの運命が大きく変わってしまうとは知らなかった...。在仏中国人作家が自らの青年時代の体験をもとに綴り、世界30カ国で翻訳された話題作。

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レビュー

たむ
たむ
2012年2月読了
文学性とエンターテイメントがバランスよく融合した素晴らしい本だった。
決してページ数は多くない。
でも、とても密度の濃い時間を過ごせた。
文化大革命や、再教育という、中国における負の歴史について興味を持った。

主人公たちのように、文学の名作をもっと読んで、味わい深い人間になりたい。
バルザックも昔、関心を持ったきり、手を出していないし。

作中で、炭鉱での労働シーンが出てくる。
これまで出会ってきた本でも、幾度か目にした。
(たとえば、『白い果実』など)
炭鉱や鉱山の閉鎖的な薄暗さって、登場人物の心理的な落ち込みや、八方ふさがりな境遇を表すのに適しているんだなとしみじみ思った。

他にも印象に残ってるエピソードはいくらでもある。
マラリアにかかった親友が、病床から腕を伸ばし、密かに心を通わす少女の髪をゆっくり解いていったシーン。
祭りの供物とされるため、事故を装って、崖から突き落とされた牛。

一つ一つのシーンが印象的なのは、作者がもともと映画監督だったからだろう。
しかもその印象的なシーン、ただ心に焼きつくだけでなく、そこから何かを考えさせる力を持っていた。

とにかく本当にいい本だった。
文庫本も出ているから購入して、手元にぜひ置いておきたい。
もちろん、ダイ・シージエの別作品もすべて読みたい。

この本を読んでいる人(2人)

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