レビュー

zooko012
2015年6月読了
故武智鉄二の最後の弟子だったという時代小説作家・松井今朝子の評伝・自叙伝。武智歌舞伎やわいせつ映画など、破天荒な才人であった武智鉄二に興味があったので、読んだが、負けず劣らず、松井今朝子の来し方が面白い。歌舞伎役者の遠縁にあたる祇園の料亭に生まれる。里子に出されたこともある。学園闘争時代の早稲田に入学し、学者の道から、松竹を経て、演劇フリーライターへ。その後武智鉄二の最後の弟子となり、近松座の脚本・演出に携わる。その果てに時代小説作家へ。読んでいて思ったのは、松井の頑固な腰の据わった強さ、こわさ。そのある意味男のような松井が女として惚れるのだから、武智鉄二は男として魅力的な人だったのであろう(臨終の場で、奥さんがいるにもかかわらず、会わせてくれと泣き崩れ執拗に迫る場面に複雑な思いが籠もる)。松井の時代小説も面白いと思うが、武智に限らず、演劇・歌舞伎の制作現場の生き証人として、ノンフィクションを出して欲しいと思った。
この本を読んでいる人(1人)
読書ステータス
読了
1人