この本について
江戸時代中期、老中田沼意次は金権政治家の汚名にまみれていた。田沼批判の戯文を書いて出頭を命じられた旗本の青山信二郎は、意次と対面し、その清廉な人柄に引きつけられる。しかし、失脚をもくろむ反田沼派の魔手はいたるところにのびていた。やがて、最愛の息子、意知が城中で斬りつけられ、意次は絶望の淵へと追いつめられてゆく―。田沼意次曰く、「たとえゆき着くところが身の破滅だとしても、そのときが来るまではこの仕事を続けてゆく、いかなるものも、おれをこの仕事から離すことはできない」田沼意次父子を進取の政治・経済改革者として大胆に捉え直し、従来の歴史観を覆した名作!経済小説の先駆でもある。
みんなの評価
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レビュー
山本周五郎作品全般に言えることだが、読んでいると、登場人物の何ともどかしいことか。本作品は、江戸時代の代表的アンチヒーロー田沼意次の物語であるが、山本周五郎らしく、田沼父子以外の庶民の姿も描かれている。田沼意次は一般には汚職政治の元凶と言う認識だと思うが、ここでは幕府の立て直しの為に、守旧派と闘う清廉な政治家として描かれている。山本周五郎は小説的真実を描いたのだから、これが真実とは言えないが、読んでみると、田沼意次は実務家ではあったが、人を動かす力には欠けていたのかた、こう言うことはあるなと感じさせる。それにしても、保之助にせよ信二郎にせよ、いや当の田沼意次も、なんとじれったいことか。それが山本周五郎の良さなのかもしれない
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