
この本について
中堅ゼネコン・一松組の若手、富島平太が異動した先は“談合課”と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。今度の地下鉄工事を取らないと、ウチが傾く―技術力を武器に真正面から入札に挑もうとする平太らの前に「談合」の壁が。組織に殉じるか、正義を信じるか。吉川英治文学新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ。
みんなの評価
4.4
5
4
3
2
1
レビュー
ストーリーの基軸にはゼネコン業界の談合が何故なくならいのかといった、ある意味では社会の縮図を描いたような内容なのに、相変わらず読みやすくて分かり易い作品として仕上がっている。要素的にも違法である談合を巡ってゼネコンや検察、銀行といったそれぞれの立場から掘り下げられた企業小説としての側面、主人公の平太が初めて直面する談合を自分なりにどう捉えて乗り越えていくかといった成長期としての側面、更には主人公とその彼女とのすれ違いなどもリアルに描かれ、とどめには社会派ミステリーとしての展開も押さえいてる。正にてんこ盛りなストーリーをエンターテイメント作品しとてまとめあげ、飽きさせずに読ませる作品力は見事!!ホントにハズさない作家だと再認識させられる。。。
読了後に改めて感じたが、主人公の設定の仕方がとにかくうまいんじゃないかと思う。「空飛ぶタイヤ」での赤松社長もそうだったけど、今回の平太も特に非凡な部分は見られず、至ってどこにでもいる若手サラリーマンとしての人物像になっている。その等身大の主人公と読者の視点とをリンクさせることで、少し小難しいと思われる裏事情に関しても誰が何の思惑でやっているのかといった構図がスムーズに受け入れられるような整理した展開がなされているし、普通のサラリーマンだからこそ生ずるプライベート的な問題も織り込むことで親近感を湧かせて感情移入がしやすくなっているからこそ、読者も惹きつけられるんじゃないだろうか。
とにかく、色々な要素が入りつつも単に事象を追いかけるのではなく、あくまでヒューマンドラマに焦点を当てた展開になっていることが好ましい。
個人的には、様々な余韻を残した終わり方も良かったしで…
ゼネコン業界に関する正しい知識を持ち合わせていないから本作がどこまで現実に則したものかは分からないし、テーマとなっている談合の是非についても何とも言えないが、ビジネスマンとしてのしがらみで深みにはまってしまう恐ろしさや、その理不尽さは共感できた。そして、自分の信念を持ちつつ、しがらみから抜け出せないような生き方の哀しさも…
ビジネスをしている以上は何かしらのしがらみが生ずるものの、如何に己を見失わずにやっていけるのかは改めて考えされられた。。。
…しかしながらコスト重視だけの入札って制度は見直してほしいもんだ。
それ故に泣かされる下請けの気持ちは業界違えど一緒だし。。。
読了後に改めて感じたが、主人公の設定の仕方がとにかくうまいんじゃないかと思う。「空飛ぶタイヤ」での赤松社長もそうだったけど、今回の平太も特に非凡な部分は見られず、至ってどこにでもいる若手サラリーマンとしての人物像になっている。その等身大の主人公と読者の視点とをリンクさせることで、少し小難しいと思われる裏事情に関しても誰が何の思惑でやっているのかといった構図がスムーズに受け入れられるような整理した展開がなされているし、普通のサラリーマンだからこそ生ずるプライベート的な問題も織り込むことで親近感を湧かせて感情移入がしやすくなっているからこそ、読者も惹きつけられるんじゃないだろうか。
とにかく、色々な要素が入りつつも単に事象を追いかけるのではなく、あくまでヒューマンドラマに焦点を当てた展開になっていることが好ましい。
個人的には、様々な余韻を残した終わり方も良かったしで…
ゼネコン業界に関する正しい知識を持ち合わせていないから本作がどこまで現実に則したものかは分からないし、テーマとなっている談合の是非についても何とも言えないが、ビジネスマンとしてのしがらみで深みにはまってしまう恐ろしさや、その理不尽さは共感できた。そして、自分の信念を持ちつつ、しがらみから抜け出せないような生き方の哀しさも…
ビジネスをしている以上は何かしらのしがらみが生ずるものの、如何に己を見失わずにやっていけるのかは改めて考えされられた。。。
…しかしながらコスト重視だけの入札って制度は見直してほしいもんだ。
それ故に泣かされる下請けの気持ちは業界違えど一緒だし。。。
読書ステータス
読書中
1人
読了
35人
読みたい
2人