
この本について
「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、一つの謎が浮かんでくる―。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。涙を流さずにはいられない、男の絆、家族の絆。
みんなの評価
4.4
5
4
3
2
1
レビュー
前評判は聞いていたものの、その期待にたがわずの秀作!
特攻隊として死んでいった祖父について知るために、主人公と姉が行った元戦友たちへのインタビューで構成された作品。
元戦友たちも立場や背景が異なることから証言も様々で、前半から中盤までは主人公たち同様に読者にもなかなか祖父の実態が掴みづらいのだが、読み進むウチに宮部久蔵という人物の輪郭が次第にはっきりとし、最後には具体的ビジョンとして形を成すまでになっていく。
これは、様々な角度から違った見方での人物像の捉え方が効果的で、同時に以前の証言との整合性が取れてくることで段々と立体的に浮かび上がってくるといった、非常に巧みな表現方法だった。
自分があまり太平洋戦争などについての知識が深くないので、内容がどこまで史実に基づいたものなのかは判断しかねるが、「特攻」という行為がキレイ事や美談では済まなかった事実。そして当時の高級官僚たちの無能さには憤りを感じてしまう。。。ただ、この高級官僚たちの出世重視の考え方は現代社会の至る所に取り残されてる気がする。当時は国民の「命」や生活が代償だったが、現代でもそれに代わる無駄な代償が支払われてるのではないだろうか…
後半には一瞬「ファンタジーか?」と思うようなエピソードもあるが、小説としての表現力の巧さを愉しみ、そして戦争の愚かさ、人の生き方や家族との絆について考えさせられる非常に良い作品でした!!
特攻隊として死んでいった祖父について知るために、主人公と姉が行った元戦友たちへのインタビューで構成された作品。
元戦友たちも立場や背景が異なることから証言も様々で、前半から中盤までは主人公たち同様に読者にもなかなか祖父の実態が掴みづらいのだが、読み進むウチに宮部久蔵という人物の輪郭が次第にはっきりとし、最後には具体的ビジョンとして形を成すまでになっていく。
これは、様々な角度から違った見方での人物像の捉え方が効果的で、同時に以前の証言との整合性が取れてくることで段々と立体的に浮かび上がってくるといった、非常に巧みな表現方法だった。
自分があまり太平洋戦争などについての知識が深くないので、内容がどこまで史実に基づいたものなのかは判断しかねるが、「特攻」という行為がキレイ事や美談では済まなかった事実。そして当時の高級官僚たちの無能さには憤りを感じてしまう。。。ただ、この高級官僚たちの出世重視の考え方は現代社会の至る所に取り残されてる気がする。当時は国民の「命」や生活が代償だったが、現代でもそれに代わる無駄な代償が支払われてるのではないだろうか…
後半には一瞬「ファンタジーか?」と思うようなエピソードもあるが、小説としての表現力の巧さを愉しみ、そして戦争の愚かさ、人の生き方や家族との絆について考えさせられる非常に良い作品でした!!