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レビュー

現実世界ではあり得ない話だが、小説世界ではよくある話だ。
このSF設定を東野圭吾 氏はどうアレンジし、どんな結末を用意するのか、と期待して手に取ったが、とても傑作とはいえなかった。
大きな感動はないし、所々辻褄があっているのか疑問を抱いてしまう点もあった。
時生の父である拓実はたしかに昔は、納得のいかないことに対しては暴力で解決して、面倒だと感じることからは逃げ出し、いつかは大きなことを成し遂げられると過信して努力しないどうしようもない男だった。それ故に当時の彼女からは振られる羽目になった。
しかし、未来というべきかいまというべきか、どちらにしろ彼は時生を息子にもつ立派な父親となっている。
その父の過去を正そうと時生はタイムスリップしたのだが、結果的に拓実はきちんのした父親になれているのだから、過去に戻る必要はあったのか。
過去は変えられない、と時生は言っていたが、では時生の母であり拓実の妻である麗子が生きているのも、そもそも拓実が改心したのも時生が過去を変えたからなのか。こういった点の答えがあやふやとなっていて、判然としない。
しかし、もし上記のことをその通りだと仮定するならば、そんな人物のことを忘れるだろうか。それはタイムスリップしてきた人物だからと言うのならば、ではなぜ思い出すことはできるのか、という問いを返したい。
過去は変えられないのか過去は変えられるのかよくわからなかった。
それに時生は未来できいた父親からの思い出話から次に取るべき行動のヒントを得ていたが、拓実は昔の彼女を取り戻すという壮大な冒険譚を息子に話さなかったのか。そもそもこうした冒険が訪れたのも時生がいたからなのか。時生がいなかったから昔の彼女が去った理由に拘ることはなかったのか。いや、自分の納得のいかないことに対しては苛立ちと憤りを感じ易い拓実ならば、時生がいなかったとしても暴力で解決しようとしただろう。
時生がいたから訪れた未来や変化した過去。
時生がいなかったから用意された未来。
こうした点についての解説が足りず、過去から訪れたという設定があまり生きていないように感じた。残念だ。
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