この本について
日本の近現代史を振り返ったとき、天皇は、伝統、宗教、土着、愛国心などを表象し、アメリカは、近代、合理主義、外来文化などの代名詞であったことがわかる。しかし、両極端であるはずのこれら二つのキーワード―「日本的なものの象徴・天皇」と「帝国・アメリカ」は、複合的に絡み合いながら日本と東アジアの二〇世紀に関与し続けてきた。時に、天皇こそ近代であり、アメリカこそ宗教であるという矛盾の中から、果たしてどのような歴史像が浮かび上がってくるのか?二つの奇妙な力の場を拠点に、歴史的想像力の可能性を切り開く。
みんなの評価
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レビュー

「天皇は近代」、「 アメリカは宗教」と言うそれぞれの表象は、既にそれなりに認識されていることであろう。しかし、この二つを複合した「天皇は近代であり アメリカは宗教である」という表象は様々な理解をうみだす。
太平洋戦争後、アメリカは「天皇制」存続を認め占領政策に利用したことから、この2つの表象にに関連があることは明らかであるが、それぞれの表象を複合させたとき、幕末に日本とアメリカが出会った後、アメリカの宗教と外交軍事政策、日本の近代化と外交軍事政策が絡み合って相互補完しあっていることが分かる。
戦後の「アメリカ、日本のアジア政策」に与えた影響、日本のアジア諸国に対する戦争責任への「一貫しない、欺瞞的な対応」」、「経済大国日本の自己イメージの形成」などなど、さらにジェンダー、女性天皇、右翼の存在など、様々な領域で事実の発見と連関、相互作用の存在を見出し、さらに様々な想像が展開されるのである。
全編、両著者の3年間ほどの期間をかけた対話からなっており、読みやすく、しかし刺激を得るところの大きい著書である。
アメリカの衰退(と中国の台頭)は、「天皇とアメリカ」から発している体系に衝撃を与えるのは間違いない。天皇の特異性の主張をやめるのか、女性天皇を認めるのか、欧州の王室のスタイルに変化すべきか、あるいはいっそ共和制への移行を視野に入れるのか。こうした変革のもと日本人の新たな表象をどこ求めるのか。さらに経済的な統合が進むであろう東アジア地域において、何が統合の表象となるのか。さらに想像力は広がっていく。
太平洋戦争後、アメリカは「天皇制」存続を認め占領政策に利用したことから、この2つの表象にに関連があることは明らかであるが、それぞれの表象を複合させたとき、幕末に日本とアメリカが出会った後、アメリカの宗教と外交軍事政策、日本の近代化と外交軍事政策が絡み合って相互補完しあっていることが分かる。
戦後の「アメリカ、日本のアジア政策」に与えた影響、日本のアジア諸国に対する戦争責任への「一貫しない、欺瞞的な対応」」、「経済大国日本の自己イメージの形成」などなど、さらにジェンダー、女性天皇、右翼の存在など、様々な領域で事実の発見と連関、相互作用の存在を見出し、さらに様々な想像が展開されるのである。
全編、両著者の3年間ほどの期間をかけた対話からなっており、読みやすく、しかし刺激を得るところの大きい著書である。
アメリカの衰退(と中国の台頭)は、「天皇とアメリカ」から発している体系に衝撃を与えるのは間違いない。天皇の特異性の主張をやめるのか、女性天皇を認めるのか、欧州の王室のスタイルに変化すべきか、あるいはいっそ共和制への移行を視野に入れるのか。こうした変革のもと日本人の新たな表象をどこ求めるのか。さらに経済的な統合が進むであろう東アジア地域において、何が統合の表象となるのか。さらに想像力は広がっていく。
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