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ソ連のイスラム教徒 (朝日選書)

越智 道雄

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レビュー

northeast57
northeast57
2010年9月読了
 著者は、潜入レポートを得意とするノンフィクション作家ですが、本書は、潜入レポートではなくて、普通に取材したソ連末期の中央アジア、カフカスのイスラム教徒に関するレポートです。

 ジャーナリストによる著書なので、ソ連のイスラムに関する仔細な歴史などはあまり掘り下げられていませんが、実際にソ連のイスラム地域に入っての取材には他に替え難い価値があります。インタビュー相手は勿論、取材の過程で出会った様々な人々の態度や感情の表れなどから、公式的な発言・立場の裏にある現実を垣間見ることができます(ロシア人のイスラム教徒に対する差別感情とそれに対するイスラム教徒の反発等が具体的に分かります)。

 また、ナゴルノ=カラバフ問題においても、アゼルバイジャン側からの見方というのは貴重な証言ではないでしょうか。

 長く政府により圧迫されていた宗教活動が、ゴルバチョフの登場により、徐々にではありますが、自由を取り戻していく過程にありました。復活したイスラムのエネルギーがどちらに向かうのかは、この時点では定かではありませんでしたが、ソ連解体の可能性も十分に感じさせるものでした。

 アカデミックな研究者の著書とは少し異なった角度から見た、中央アジアイスラムの姿として貴重なレポートではないでしょうか。

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