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世論 (下) (岩波文庫)

世論 (下) (岩波文庫)

W.リップマン

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レビュー

H. Tarkun
H. Tarkun 2011年8月読了
「世論」という言葉は現代でも盛んに使われ、時には政治家側の詭弁に、時には国民側のわがままの枕詞として聞かれる。

しかし、本書も指摘するように、実際には世論や民意というものが必然的に存在する訳ではない。個々人の考え方は多種多様である。人々は日々の生活に忙しく、複雑な事実関係のすべてを理解し意見を持つことは不可能である。人々は遠く離れた事象を理解する時には、先入観を通したイメージに頼るしかない。

世論というのは、このような人々を集団としてまとめていくために、政治的リーダーが分かりやすい象徴的な言葉や理念を用いて創り出されるものである。

このような見方は、現代でも政治の世界を不足なく説明するものであるし、引いては政治に対する冷めた見方にもつながる。所詮、世論を元にした民主主義というのは他よりマシなシステムでしかない。

しかし、最後の方の章で筆者は、より理想的な世論形成について希望を捨てていない。情報公開や共有のあり方。教育による民度の向上。これらを地道に世代から世代へつないでいくことが、よりマシな世論形成につながるのだろう。

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