書籍情報
- ページ数:
-
215ページ
- 参照数:
- 227回
- 登録日:
- 2018/10/10
- 更新日:
- 2019/06/29
- 所有者:
-
gugucchiさん
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初期の「空飛ぶ馬」「夜の蝉」には、女子大生の「私」の本を読むことへの矜持や、恋や家族・友人との関係、人の闇へのとまどいが、これを温かく見守る人生の先達としての円紫さんの視線とともに、何ともみずみずしく描かれていた。そして、そこで出てくる落語の題名、マニアックな作家名も楽しく、何とも魅力的なシリーズであった(なお、自分はこれをきっかけに落語にはまることになる)。
それが何だか、そのうち、「私」の名を借りた、北村薫自身の文学上の発見披露シリーズになってしまい、んんん・・・と思っているうちに、一端終止符。
そこで、17年ぶりに再会した本書である。やっぱり文学上の発見(太宰治のロココの認識?)に終始してしまっているのは残念であるが、親友で高校の先生となった正ちゃんの「高校生の時に君と出会っていたらあげた本だから」と太宰の「女生徒」のくたびれた文庫をあげるやりとりには、自分の一番好きでたまげた太宰の小説が「女生徒」であることもあり、じーん。
とはいえ、年を経て安定感を増した「私」に面白みはない。本シリーズの良さは、本読みで理屈に勝る「私」の若さによるとまどいや揺らぎにあったのだと改めて思い知らされた(とりわけ、本読みの妹である「私」が美しいだけが取り柄だと知らず知らず見下していた姉の心情を知り心が揺れる「夜の蝉」は姉妹ものの大傑作だと思う)。