揺れるユダヤ人国家―ポスト・シオニズム (文春新書)
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1人が登録
40回参照
2010年9月26日に更新
書籍情報
- ページ数:
-
222ページ
- 参照数:
- 40回
- 登録日:
- 2010/09/26
- 更新日:
- 2010/09/26
- 所有者:
-
northeast57さん
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内容紹介
「ユダヤ人論」が好きなわりに、われわれ日本人はその実際をよく知らない。「ユダヤ陰謀説」などは論外としても、ユダヤ人といえば、みな熱心なユダヤ教徒で一枚岩を誇る民族、と思いがちだ。しかし例えば、建国半世紀のイスラエルは、百余国からのユダヤ人移民をかかえるマルチ・エスニック社会であり、ヨーロッパ系とアジア・アフリカ系の対立も激しい。世俗化、脱宗教化が進む一方で、宗教回帰現象もおきている。中東和平に対する考えも一様ではない。拡散するアイデンティティに揺れるイスラエルの行方を探り、現代における国家と民族、宗教の問題を考察する。
書籍情報提供: Google Books
📝 レビュー (northeast57さんのレビュー)
評価:
5/5
レビュー:
イスラエルのユダヤ人と聞くと、一神教たるユダヤ教を深く信仰し、「約束の地、パレスチナ」をめぐっては、パレスチナ人と激しく対立を続ける、一致団結した人々といったイメージがあるのではないでしょうか。しかし、実際のイスラエルは多様化が進み、むしろ分断されて混迷を深めていると言っても良い状態です。
分断の第一は、宗教的/世俗的の対立です。宗教への回帰(原理主義的とも言える)現象が現れる一方、世俗化、脱宗教化が進んでもいます。第二は、スファラディー・ミズラヒ(アジア・アフリカ系)とアシュケナジー(ヨーロッパ系)のエスニックな対立です。第三は、中東和平をめぐるイデオロギー的な対立です。占領地の返還に反対する大イスラエル主義と、占領地を返還して和平を達成を支持するグループに分かれています。
また、ユダヤ系アメリカ人は、イスラエルの強力な支持母体ではありますが、イスラエルのユダヤ人との間には微妙なギャップが存在します(「ガラス越しのキス」)。アメリカのユダヤ人の方がよりイスラエルを無批判に支持する傾向があり(遠隔地ナショナリズム)、対パレスチナではより強硬な態度が支持されるます。しかし、現実的な対応を迫られ、和平に向けて多様な意見を戦わせているスラエルのユダヤ人にとって、アメリカのユダヤ支持は歓迎すべきことばかりではありません。アメリカのユダヤ人のフィルターを通して見ることの多い日本人としては、この点は、大いに注意べき事だと思います。
このように、決して一枚岩ではない現実のイスラエルのユダヤ人の姿を丁寧に解説する本書は、荒唐無稽な「ユダヤ人陰謀説」も含めた日本人のユダヤ人観を正すものであり、今後の中東和平を考える上でも重要な視点を提供しているものと思います。
分断の第一は、宗教的/世俗的の対立です。宗教への回帰(原理主義的とも言える)現象が現れる一方、世俗化、脱宗教化が進んでもいます。第二は、スファラディー・ミズラヒ(アジア・アフリカ系)とアシュケナジー(ヨーロッパ系)のエスニックな対立です。第三は、中東和平をめぐるイデオロギー的な対立です。占領地の返還に反対する大イスラエル主義と、占領地を返還して和平を達成を支持するグループに分かれています。
また、ユダヤ系アメリカ人は、イスラエルの強力な支持母体ではありますが、イスラエルのユダヤ人との間には微妙なギャップが存在します(「ガラス越しのキス」)。アメリカのユダヤ人の方がよりイスラエルを無批判に支持する傾向があり(遠隔地ナショナリズム)、対パレスチナではより強硬な態度が支持されるます。しかし、現実的な対応を迫られ、和平に向けて多様な意見を戦わせているスラエルのユダヤ人にとって、アメリカのユダヤ支持は歓迎すべきことばかりではありません。アメリカのユダヤ人のフィルターを通して見ることの多い日本人としては、この点は、大いに注意べき事だと思います。
このように、決して一枚岩ではない現実のイスラエルのユダヤ人の姿を丁寧に解説する本書は、荒唐無稽な「ユダヤ人陰謀説」も含めた日本人のユダヤ人観を正すものであり、今後の中東和平を考える上でも重要な視点を提供しているものと思います。
northeast57
Lv.124
イスラエルのユダヤ人と聞くと、一神教たるユダヤ教を深く信仰し、「約束の地、パレスチナ」をめぐっては、パレスチナ人と激しく対立を続ける、一致団結した人々といったイメージがあるのではないでしょうか。しかし、実際のイスラエルは多様化が進み、むしろ分断されて混迷を深めていると言っても良い状態です。
分断の第一は、宗教的/世俗的の対立です。宗教への回帰(原理主義的とも言える)現象が現れる一方、世俗化、脱宗教化が進んでもいます。第二は、スファラディー・ミズラヒ(アジア・アフリカ系)とアシュケナジー(ヨーロッパ系)のエスニックな対立です。第三は、中東和平をめぐるイデオロギー的な対立です。占領地の返還に反対する大イスラエル主義と、占領地を返還して和平を達成を支持するグループに分かれています。
また、ユダヤ系アメリカ人は、イスラエルの強力な支持母体ではありますが、イスラエルのユダヤ人との間には微妙なギャップが存在します(「ガラス越しのキス」)。アメリカのユダヤ人の方がよりイスラエルを無批判に支持する傾向があり(遠隔地ナショナリズム)、対パレスチナではより強硬な態度が支持されるます。しかし、現実的な対応を迫られ、和平に向けて多様な意見を戦わせているスラエルのユダヤ人にとって、アメリカのユダヤ支持は歓迎すべきことばかりではありません。アメリカのユダヤ人のフィルターを通して見ることの多い日本人としては、この点は、大いに注意べき事だと思います。
このように、決して一枚岩ではない現実のイスラエルのユダヤ人の姿を丁寧に解説する本書は、荒唐無稽な「ユダヤ人陰謀説」も含めた日本人のユダヤ人観を正すものであり、今後の中東和平を考える上でも重要な視点を提供しているものと思います。