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イラン人の心 (NHKブックス (393))

イラン人の心 (NHKブックス (393))

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(5.0)
1人が登録
36回参照
2010年9月26日に更新

書籍情報

ページ数:
253ページ
参照数:
36回
登録日:
2010/09/26
更新日:
2010/09/26

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📝 レビュー (northeast57さんのレビュー)

評価:
5/5
レビュー:
 著者は、ペルシャ文学者で、本書は、1963年から1967年までの4年間の若き日のイラン留学記です。
 当初はイラン人気質に戸惑い反発しながら、イラン人の心を理解していく過程が、様々なエピソードを交えながら綴られています。また、研究の意義への疑問や将来に対する不安など、海外留学生なら誰でも陥る心理状態から、自信を取り戻していく過程も、本書のもう一つの重要なテーマとなっています。
 学生寮の下働きのオバサン、オジサン達や、町の商店主といった庶民達との出会い、交流から、自己中心的で、お節介で、おしゃべり好きで…とった様々なイラン人気質に、辟易させられ、反発しながらも、徐々に親しみを覚え、理解を進めていく著者の心の動きに従って、私もイラン人気質を少しは理解できたような気がします。
 さらに、教授達との交流からは、イラン人の誇りである歴史や文学に対する自負心の中から、庶民達にも通じる(チョッと自己中心的で陶酔的なところもある)「イラン人の心」への理解を深めていきます。
 また、欧米やアジアからの留学生達との交流は、著者の精神的よりどころでもあり、各国気質の違いを更に認識することともなります。
 そうした中、著者の親友となるのは、アメリカ人留学生で、2人は強固な「日米同盟」を形成しますが、アメリカは、やはり日本人にとって比較的理解し易い国なのでしょうか。もっとも、この親友は、(両親の大反対を押し切って)アラブ人青年と結婚してしまい、著者を驚かせ、また焦燥感を感じさせることにもなりますが(いかにもアメリカ人的な行動!?)。
 現在から40年以上も前(東京オリンピックの前年!!)、現在とは全く異なり、日本にいてはイランに関する情報など殆ど知ることの出来ない時代に、単身イラン留学を実行した著者は、おそらく現在の我々が感じるよりもずっと強烈に、イランの文化、社会、そして「こころ」に出会い、それだけ深い理解を得たのではないでしょうか。
 帰国後の著者は、ペルシャ文学の研究者として活躍し、多くの著書・翻訳書を著しています。「ホスローとシーリーン」や「ライラとマジュヌーン」は本書中にも何度も登場します。

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 著者は、ペルシャ文学者で、本書は、1963年から1967年までの4年間の若き日のイラン留学記です。
 当初はイラン人気質に戸惑い反発しながら、イラン人の心を理解していく過程が、様々なエピソードを交えながら綴られています。また、研究の意義への疑問や将来に対する不安など、海外留学生なら誰でも陥る心理状態から、自信を取り戻していく過程も、本書のもう一つの重要なテーマとなっています。
 学生寮の下働きのオバサン、オジサン達や、町の商店主といった庶民達との出会い、交流から、自己中心的で、お節介で、おしゃべり好きで…とった様々なイラン人気質に、辟易させられ、反発しながらも、徐々に親しみを覚え、理解を進めていく著者の心の動きに従って、私もイラン人気質を少しは理解できたような気がします。
 さらに、教授達との交流からは、イラン人の誇りである歴史や文学に対する自負心の中から、庶民達にも通じる(チョッと自己中心的で陶酔的なところもある)「イラン人の心」への理解を深めていきます。
 また、欧米やアジアからの留学生達との交流は、著者の精神的よりどころでもあり、各国気質の違いを更に認識することともなります。
 そうした中、著者の親友となるのは、アメリカ人留学生で、2人は強固な「日米同盟」を形成しますが、アメリカは、やはり日本人にとって比較的理解し易い国なのでしょうか。もっとも、この親友は、(両親の大反対を押し切って)アラブ人青年と結婚してしまい、著者を驚かせ、また焦燥感を感じさせることにもなりますが(いかにもアメリカ人的な行動!?)。
 現在から40年以上も前(東京オリンピックの前年!!)、現在とは全く異なり、日本にいてはイランに関する情報など殆ど知ることの出来ない時代に、単身イラン留学を実行した著者は、おそらく現在の我々が感じるよりもずっと強烈に、イランの文化、社会、そして「こころ」に出会い、それだけ深い理解を得たのではないでしょうか。
 帰国後の著者は、ペルシャ文学の研究者として活躍し、多くの著書・翻訳書を著しています。「ホスローとシーリーン」や「ライラとマジュヌーン」は本書中にも何度も登場します。

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