メニュー
近代国家とキリスト教 (平凡社ライブラリー)

近代国家とキリスト教 (平凡社ライブラリー)

この本の所有者

(5.0)
2人が登録
42回参照
2010年9月26日に更新

書籍情報

ページ数:
310ページ
参照数:
42回
登録日:
2010/09/26
更新日:
2010/09/26

この本を共有する

内容紹介

具体的論証と精緻な思惟で書かれた基本図書
Google プレビュー 書籍情報提供: Google Books
Google Booksで見る

📝 レビュー (northeast57さんのレビュー)

評価:
5/5
レビュー:
本書は、「近代におけるキリスト教の命運」、即ちキリスト教と近代国家の関係を、宗教改革、フランス革命、ロシア革命を主なテーマとして論じています。
宗教改革の背景には、ドイツにおける領邦国家の存在があり、ローマ・カトリック教会の影響力の排除と教会財産接収の利益が、ルター派を支えていたのでした。一方、対抗宗教改革においても、絶対王政国家は、カトリック教会と結びつつも、やはりローマからの独立性を高める行動をとっていました。
フランス革命は、国家とカトリック教会の全面的な「闘争」となりました。フランス革命により、世俗国家、聖俗分離の考え方が広まり、キリスト教は公共的な場での力を失います。この聖俗分離の考えは、日本人には理解しにくいのですが、イスラーム教徒移民に対し、公立学校におけるベール着用の禁止というかたちで、現在も国家の強い要請となって現れています。
ロシア革命は、キリスト教にとってより危機的なものでした。攻撃的無神論を党是とする共産思想の影響により、ロシアばかりではなく広くヨーロッパにおいて、キリスト教の影響力は低下しました。
このように、近代国家の歴史はキリスト教との「闘争」の歴史であり、世俗国家、聖俗分離は、近代国家の基盤的な思想となっています。
一方守勢に回っていたキリスト教(や他の宗教)ですが、近年になり、ファンダメンタリズムが勢いを増し、世俗国家に対する挑戦を挑んでいるようです。「神の復讐」が始まったのかもしれません。
以上のように、本書は、現代の日本人にはピンと来ない国家と宗教の関係を深く考えさせるものです。内容はアカデミックですが、表現は平易でけして読みにくくはありません。「宗教」というものを考える上で、貴重な一冊だと思います。

ログインが必要です

この本をレビューしたり、読書進捗を記録するにはログインが必要です。

ログイン

AIが見つけた似た本

「近代国家とキリスト教 (平凡社ライブラリー)」の文章スタイル、テーマ、内容を分析し、 類似度の高い本を4冊見つけました

72.1%
神は妄想である―宗教との決別

神は妄想である―宗教との決別

リチャード・ドーキンス

人はなぜ神という、ありそうもないものを信じるのか?物事は、宗教が絡むとフリーパスになることがままあるが、なぜ宗教だけが特別扱いをされるのか?「私は無神論者である」と公言することがはばかられる、たとえば...

8人 4
71.9%
生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)

福岡 伸一

生きているとはどういうことか―謎を解くカギはジグソーパズルにある!?分子生物学がたどりついた地平を平易に明かし、目に映る景色をガラリと変える。

80人 3.9
70.2%
自分ブランドの教科書

自分ブランドの教科書

藤巻 幸夫

あなたにしかない武器、センス、表現法...。それを磨こう。

3人 4
70.2%
おめでたい日本人に教える虐殺の歴史

おめでたい日本人に教える虐殺の歴史

小滝 透

タブーを紐解けば真実が見えてくる。原爆投下、宗教戦争、共産主義、ナチス、ポルポト、アルカーイダ...気鋭の歴史家が数々の殺戮の軌跡をなぞり、人から人へ、連綿と受け継がれる「人殺しの原理」を読み解く異色...

1人 4
northeast57
northeast57 Lv.124

本書は、「近代におけるキリスト教の命運」、即ちキリスト教と近代国家の関係を、宗教改革、フランス革命、ロシア革命を主なテーマとして論じています。
宗教改革の背景には、ドイツにおける領邦国家の存在があり、ローマ・カトリック教会の影響力の排除と教会財産接収の利益が、ルター派を支えていたのでした。一方、対抗宗教改革においても、絶対王政国家は、カトリック教会と結びつつも、やはりローマからの独立性を高める行動をとっていました。
フランス革命は、国家とカトリック教会の全面的な「闘争」となりました。フランス革命により、世俗国家、聖俗分離の考え方が広まり、キリスト教は公共的な場での力を失います。この聖俗分離の考えは、日本人には理解しにくいのですが、イスラーム教徒移民に対し、公立学校におけるベール着用の禁止というかたちで、現在も国家の強い要請となって現れています。
ロシア革命は、キリスト教にとってより危機的なものでした。攻撃的無神論を党是とする共産思想の影響により、ロシアばかりではなく広くヨーロッパにおいて、キリスト教の影響力は低下しました。
このように、近代国家の歴史はキリスト教との「闘争」の歴史であり、世俗国家、聖俗分離は、近代国家の基盤的な思想となっています。
一方守勢に回っていたキリスト教(や他の宗教)ですが、近年になり、ファンダメンタリズムが勢いを増し、世俗国家に対する挑戦を挑んでいるようです。「神の復讐」が始まったのかもしれません。
以上のように、本書は、現代の日本人にはピンと来ない国家と宗教の関係を深く考えさせるものです。内容はアカデミックですが、表現は平易でけして読みにくくはありません。「宗教」というものを考える上で、貴重な一冊だと思います。

グローバル検索

ReadNest全体から本やレビューを検索します