レビュー

zooko012
2016年7月読了
ファンを自称する内田樹の村上春樹に纏わる硬軟両面のおしゃべりである。内田による村上春樹の小説総括は、結局、「実は存在しないけれども皆がそのその存在を前提としている父権的なもの(規範、秩序等)がないと分かった時に人はどう生きていくのかをごく一般の人が試される冒険小説」といったところか。自分自身は自分が村上春樹に魅力を感じるのは必ずしもその部分ではないと思うのでその総括の当否はさておくとする。とはいえ、村上春樹が、労働、日々の営みに価値をおき、その中で「公正であること」、誰もがするわけではないけれども世界を支えているかもしれない「雪かき」を行う誠実さを尊重しているとの指摘はそのとおりだし、大いに共感する。柴田元幸との対談も面白く、改めて柴田は頭、勘の良い人だと思った。