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我思うゆえに我あり 死刑囚・山地悠紀夫の二度の殺人

我思うゆえに我あり 死刑囚・山地悠紀夫の二度の殺人

小川 善照

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この本について

平成12年7月29日初体験の3日後、16歳の少年は母親を金属バットで殴り殺した。平成17年11月17日美人姉妹のマンションに侵入した22歳の青年は、ふたりをナイフで殺害し、放火して逃亡した。追跡9年!執念の取材を続けたジャーナリストが到り着いたふたつの殺人事件を結ぶ「犯人のたった一度の恋」とは?第15回小学館ノンフィクション大賞優秀作。

みんなの評価

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レビュー

ぼんぼん
ぼんぼん
2010年6月読了
16歳で母親を殺害し、
22歳で強殺事件を起こして死刑になった山地悠紀夫。
 
彼の死刑が確定するまでを追ったノンフィクション。
なのだけど、、
結局、なにも分からなかった。
山地悠紀夫は何も語らないままこの世を去ってしまって
だからなぜ?どうして?というやり場のない悲しみと問いかけだけが、彼と関わった人の中に残った。
  
徹底的に心を開くことを拒否していた彼だけど、
数度だけ、チラリと心の奥底の叫びを覗かせることがあった。 
「僕をわかってほしい」「自分は生まれてくるべきではなかった」
そして携帯電話に残っていた江崎美幸の電話番号。
たったひとことだけの言葉、たった一行だけの描写。
それだけなのに、胸がしめつけられる思いがした。
 
山地の目には、この世の中はどんな風に映っていたんだろう。
どんな孤独を抱えていたんだろう。。
結局最後まで、山地は母親の影にとらわれていたのか?
16歳のあの夏から逃れることができなかったのか。
 
彼の人生とは、いったいなんだったんだろう。
 
本や映画で人の人生を知るとき、わたしはどうしてもそこに意味を見いだしたくなる。
人に物語を求めてしまう。
この行動の裏にはこんな気持ちがあったはずだ。
今までのこんな経験が、この言葉を言わせたはずだ。
 
それにならって、山地のことを考えていた。
16歳の時の恋が、彼に希望と絶望を教えた。とか、
愛情に恵まれなかった幼少期のトラウマが・・・とか、
やっぱり情緒障害が・・・とか。
 
でもなんかしっくりこない。
言葉で簡単に説明できる意味や物語なんて浅はかな後付けにすぎないって正面から否定されたような。
どんなに言葉を並べても、彼が本当に抱えていたものを推し量ることはできない。
誰も本当には理解できなかった。彼を。
そんな重い重い闇と、新聞の切れ端みたいに軽い命を抱えてこの世界を漂流して、そして死んでしまった。
 
こんな人生があった、という事実に、ただただショック。

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読書ステータス

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