この本について
「医療相談室」―そこは、生・老・病・死がせめぎあう所。頚髄を損傷し、自暴自棄からリハビリを拒否し続ける男性入院患者。幼い息子の医療費免除をヒステリックに訴える母親。何不自由ない暮らしに不安を覚え、通院を繰り返す老女。半身麻痺の夫の退院を拒む裕福な妻。本名も年齢も語ろうとしないインテリ風のホームレス。突然のガン宣告を受けたあと、一度だけその部屋を訪れた独身のキャリアウーマン...。そして、またひとりのクライアントがこの部屋を訪れる。西原寛治、87歳。医療ソーシャルワーカー・猪口千夏は、枯れてなお狂おしいまでに燃え続ける、人生最後の命の明滅を見つめることになる。