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アフガニスタン紀行 (朝日文庫)

岩村 忍

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レビュー

northeast57
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2010年9月読了
謎の民族「モゴール」の調査を主な目的とした、8000キロの踏査の記録。
 1903年にモンゴル語を話すモゴール族の存在が報告されたが、その後居住地すら確認されず、いわば幻の民族となっていたモゴール族を求めて、1954年3月、著者はアフガニスタンの首都カーブル(現在は「カブール」と表記されるが、本書では「カーブル」と表記されている)に入る。若いアメリカ人研究者、通訳とともに4月末に出発し、5月21日、ヘラート近郊で、モゴール族を発見し、さらにその後、カーブルに近いバグラーンにもモゴール族が居住していることを知り、主要な目的を達成して、6月中旬カーブルに戻る。7月には、ハザーラジャートへ。主に豪族の家に滞在して、中世的社会の残存するハザーラ族の社会を調査する。
 結局、モゴールやハザールの起源は謎のままなのであるが、本書の魅力は、旅の行程自体にある。美しいが厳しい自然に曝されながらのジープの旅。チャイ・ハーナで味わう茶の味。モンゴルに破壊された町の遺跡。故障した著者達のジープを1日かかって修理してくれる路線バスの運転手と、文句も言わず待ち続けるバスの乗客達。特に、ヒンズークシ山中ハザーラジャートの中世さながらの社会は印象深い。
 知的紀行文学として大いに楽しめる好著である。
 ところで、著者の調査に色々な便宜を図ってくれるのは、かつて日本への留学(戦争前から戦争中にかけて!!)を経験したアフガニスタン人達である。海外から留学生を受け入れることの重要さを再認識させられる。

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