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村上春樹とイラストレーター -佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸-

村上春樹とイラストレーター -佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸-

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1人が登録
10,011回参照
2016年8月13日に更新

書籍情報

ページ数:
240ページ
参照数:
10,011回
登録日:
2016/08/13
更新日:
2016/08/13
所有者:
zooko012 zooko012さん

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📝 レビュー (zooko012さんのレビュー)

レビュー:
村上春樹の本を彩ってきたイラストレーター達。佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸の村上春樹との仕事を語った本である。オールカラーで、必ずしも自分が所持していないハードカバーの本のイラストまでついていてとても楽しい。本の造りもかわいい。以下雑感。

【佐々木マキ】
初期三部作など村上春樹の初期小説に欠かせなかった人。改めてイラストをまとめてみて、この人ほど、村上春樹の小説とぴったりな雰囲気を持っていた人はいなかったのではないかと思った。「キリコ」のような絵とあったがたしかにそのとおりで、ちょっと非現実でユーモアがあってドライだけどべたつかない情緒がある。その空気感は村上春樹にぴったり。今の村上春樹の小説に佐々木マキがあうとは思わないが、一方で、今の村上春樹の小説の装丁・イラストは佐々木マキの時代ほど本との一体感はない気がする。

【大橋歩】
何度か述べているが、この人の絵自体は、想像力を掻き立てるし、素敵だと思う。ただ村上春樹の文章とは決定的にあわない。村上春樹のエッセイに確かにある村上春樹の女々しさが嫌な形で表出してしまうと思う。

【和田誠】
この人は、いろいろな著名な作家(三谷幸喜とか小林信彦とか)の装丁を手掛けており、一つのスタイルとなってしまっているため、率直にいって、どの装丁も絵も同じじゃないか、おなか一杯飽きた!、と思っていた。とはいえ、今回、知らなかった村上春樹著作全集などの装丁をみて、いやいや素晴らしい装丁だな、と思った。また、自分が村上春樹のエッセイの中で一番好きな「ポートレイトオブジャズ」は和田誠のイラストあってのもの。飽きたけどくさせない、と思った。

【安西水丸】
村上春樹のエッセイには、この人のひょうひょうとした絵柄が村上春樹の少年性、ユーモアを一番よくあらわしていて、あっていたと思う。改めてまとめてみて、いわゆる村上堂シリーズが、カラーだったり、クレヨンタッチだったり、線画だったり色々あったことに驚かされた。また、「中国行きのスローボート」の装丁も安西水丸であったらしく(村上春樹もこれを最も評価していたらしい)、なるほどと思った。

村上春樹は、個人的な知り合いについて個人的感情をめったに記さないが、この本にも出てくる「まったく世の中のためにはならないけれど、ときどき向こうから勝手に噴き出してくる、あまり知的とはいいがたい種類のへんてこな何かを前向きに、同情的にカラフルに理解してくれる数少ない人の一人です。ひょっとしたらこの人の中にも同じような精神領域があるのかもしれません。ときどきそう感じることがあります。僕にとってはソウル・ブラザーのような人です」(原典:村上かるた)との村上春樹の水丸評に改めてそのとおりと思った。この本にもちょっと出てくる村上春樹の安西水丸に対する追悼文、また、水丸の娘さんに対する愛情のこもった結婚の祝電(原典は確か雑文集)などをみてみても、村上春樹にとって安西水丸は数少ない心許せる、かけがえのない人だったのだと思う。

読書履歴

2016/08/13 240ページ

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村上春樹の本を彩ってきたイラストレーター達。佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸の村上春樹との仕事を語った本である。オールカラーで、必ずしも自分が所持していないハードカバーの本のイラストまでついていてとても楽しい。本の造りもかわいい。以下雑感。

【佐々木マキ】
初期三部作など村上春樹の初期小説に欠かせなかった人。改めてイラストをまとめてみて、この人ほど、村上春樹の小説とぴったりな雰囲気を持っていた人はいなかったのではないかと思った。「キリコ」のような絵とあったがたしかにそのとおりで、ちょっと非現実でユーモアがあってドライだけどべたつかない情緒がある。その空気感は村上春樹にぴったり。今の村上春樹の小説に佐々木マキがあうとは思わないが、一方で、今の村上春樹の小説の装丁・イラストは佐々木マキの時代ほど本との一体感はない気がする。

【大橋歩】
何度か述べているが、この人の絵自体は、想像力を掻き立てるし、素敵だと思う。ただ村上春樹の文章とは決定的にあわない。村上春樹のエッセイに確かにある村上春樹の女々しさが嫌な形で表出してしまうと思う。

【和田誠】
この人は、いろいろな著名な作家(三谷幸喜とか小林信彦とか)の装丁を手掛けており、一つのスタイルとなってしまっているため、率直にいって、どの装丁も絵も同じじゃないか、おなか一杯飽きた!、と思っていた。とはいえ、今回、知らなかった村上春樹著作全集などの装丁をみて、いやいや素晴らしい装丁だな、と思った。また、自分が村上春樹のエッセイの中で一番好きな「ポートレイトオブジャズ」は和田誠のイラストあってのもの。飽きたけどくさせない、と思った。

【安西水丸】
村上春樹のエッセイには、この人のひょうひょうとした絵柄が村上春樹の少年性、ユーモアを一番よくあらわしていて、あっていたと思う。改めてまとめてみて、いわゆる村上堂シリーズが、カラーだったり、クレヨンタッチだったり、線画だったり色々あったことに驚かされた。また、「中国行きのスローボート」の装丁も安西水丸であったらしく(村上春樹もこれを最も評価していたらしい)、なるほどと思った。

村上春樹は、個人的な知り合いについて個人的感情をめったに記さないが、この本にも出てくる「まったく世の中のためにはならないけれど、ときどき向こうから勝手に噴き出してくる、あまり知的とはいいがたい種類のへんてこな何かを前向きに、同情的にカラフルに理解してくれる数少ない人の一人です。ひょっとしたらこの人の中にも同じような精神領域があるのかもしれません。ときどきそう感じることがあります。僕にとってはソウル・ブラザーのような人です」(原典:村上かるた)との村上春樹の水丸評に改めてそのとおりと思った。この本にもちょっと出てくる村上春樹の安西水丸に対する追悼文、また、水丸の娘さんに対する愛情のこもった結婚の祝電(原典は確か雑文集)などをみてみても、村上春樹にとって安西水丸は数少ない心許せる、かけがえのない人だったのだと思う。

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