小さいおうち (文春文庫)
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1910年代?の小さな家に女中として働いたお婆さんの話。昔の時代の感覚が素晴らしく表現されている
22歳で、4月から社会人を控えている若輩者の私にとって、「昭和」や「戦争」、「女中」といったものの存在は遠く、言わば幻想といっても過言ではないほど未知のものである。
したがってこれらの存在は、現在明かされている結果でしか知り得ない。しかし、結果は必ずしも事実ではないのだと本書によって痛感した。
本書の体裁は、まだ戦争が始まってもいない時代、13歳ごろから女中として田舎を離れ、ただ雇われた家のために奉公してきたタキという女性の手記をとっている。
現代に生きる読者が感じるであろう、教科書などで語られる過去の結果と、キタおばあちゃんが語る事実との差異への驚きを、この手記を甥の次男である健史が見事に表してくれる。
この時代はこんな長閑なものではないよ、ばあちゃんと諭す場面は非常に共感できた。
しかし、冒頭にも述べたように事実と結果は異なるのだろう。
本書が面白かったのかどうか。
それに対する答えを私は持ち合わせていない。
なにか、これまでの小説とは違った。
いや、「違った」という表現は的を射ているようで実は狙っていない隣の的かもしれない。
非常に浅いものではあるが、これまでの私の読書人生にこうした読み物はなかった、というのが正しいだろう。
そう、本書は小説であって小説でないのだ。
ある人物が自身の人生をまとめようと、ただ単に目的もなく時間の許す限り過去の思い出に従って書き連ねた、言わば個人の秘密のノート、あるいは日記のようなものだ。
ミステリー小説や、推理小説のように大きい出来事が起きる訳でもなく、恋愛小説や感動小説のように涙が頬を伝う場面がある訳でもない。
ひたすら、タキばぁの思い出に浸るだけだ。
しかしその湯加減は非常に心地の良いものなのであるから、不思議である。
だから読後も不思議な気がしてならなかった。
本書が幕を閉じたことを憂うことも、読み切った達成感も、失礼ではあるがあまり胸中に感想という感想もなかった。
ただ「終わった」という事実だけが心にあった。
従って、私には本書を、小説として面白かったかどうか評価できない。
しかし、何か有意義な時間を過ごせたことだけは確かである。
実際の祖父母からは聞いたことのない話を、もう一人の祖母から聞いたような思い出を体験した。
2014/04/05
これってホントに直木賞に値する小説なのか?戦前の昭和風俗を描いたといって評価されているようであるが、「勉強した観」がぬぐえない。また、ここで描かれる女中の憧れの奥様と芸術家の青年との秘めた恋、それに対する女中の思いも、陳腐、類型的の域を出ない。謎めいた手記、叔母の生前のエピソードを追う甥といったのも、よくある道具立てだと思うが・・・。ただ世評はよいようである。自分の感覚が間違っているのか??
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