📝 レビュー (Yooさんのレビュー)
評価:
4/5
レビュー:
巻4の厳島御幸から巻6の横田河原合戦まで。巻4の中心は以仁王である。ただ、私怨を腫らすことが目的の源頼政に唆されて、その気になってしまい、遂には討たれてしまうところは、かわいそうな気もするが、まぁ自業自得かとも思う。有名な橋合戦では、馬に乗り慣れない以仁王が何度も落馬してしまい、そのため仕方なく宇治橋に陣地を作ると言う下りがあり、いかにもリアルな感じがする。頼政は鵺退治で有名で、優れた武将だったと言う印象だったが、保元平治の乱でもはかばかしい功績を上げられなかったと言うし、それ程の人でもなかったのだろうか。巻5の中心は、頼朝に謀反を唆す文覚である。伊豆に流罪になったのに、それにも懲りずに、頼朝の父の偽の髑髏を見せて謀反を迫るところなど、とても現代人の想像の範疇に入らない行いである。巻6では、いよいよ木曽義仲が出兵するが、個人的な関心は、葵前と小督の下りである。葵前は中宮の女房の召使で、高倉天皇が手をつけたのに、天皇が体面を気にして遠ざけたために結局亡くなってしまう。落胆する天皇のために中宮が世話をしたのが小督だが、清盛の怒りを恐れて嵯峨に隠れてしまう。この小督を探しに行くところが能になっているが、血生臭い平家物語の中ではなかなか趣のある作品である。そのそもこの話は高倉上皇が亡くなって、その挿話として語られるのだが、実質的な政治権力のなかった天皇は、こんなことしかすることがなかったのだろうか。今までは平家物語の各話をつまみ食いしていたのだが、こうして通して読んでみると、以前とは違う楽しみがある。
読書履歴
2020/09/26
263ページ
小督がかわいそう
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