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過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042) (アスキー新書)

過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042) (アスキー新書)

池田 信夫

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レビュー

tresor_135@yahoo.co.jp
tresor_135@yahoo.co.jp 2009年1月読了
これまでの実績から今後のIT主眼の経済動向の大局を捕らえていると思う。展開が早くおもしろい。

・(ゴードン)ムーアの法則:半導体の性能は18ヶ月で2倍になる
 ⇒全ての情報はデジタル化され、コンピュータで処理される。
 ⇒その処理コストは3年で1/4、10年で1/100
 ⇒情報供給が過剰になる
・経済学は「稀少な資源を如何に効率的に配分するか」
 ⇒稀少とは「需要が供給を上回ること」、逆の場合価格がつかない
・「コモディティ化」とは代替可能になり「日用品化」すること
・情報は個人化する
 ⇒マスメディアやパーソナルメディアへ移行する
 ⇒情報の価値=(新規性×娯楽性)÷自分との距離
 ⇒amazonの本の売り上げは4万位までと以下で同売上
・垂直統合から水平分業へ
 ハードはムーアの法則により指数関数的に性能が向上する
 対してソフト開発は複雑性が指数関数的に増大する
 ⇒原因は「本質的な複雑性」
 ⇒数学や物理学が証明できるのは複雑性を除外し、除外した複雑性が本質を変えるものではないからであるが、ソフト開発から複雑性を除外するとその本質をも除外することになりかねない。
・インフラ効率はムーアの法則により3年で4倍となるが、ソフトの観点からインフラを固定して先々の計画を行うと将来使えないインフラを想定してしまい破綻する。(例:地上デジタル放送⇒放送手段はキャリアに任せてコンテンツに集中すればよかった)
・垂直統合⇒モジュール化⇒水平分業⇒コモディティ化⇒世代交代⇒垂直統合・・・
・パラダイス鎖国
 ⇒日本語の壁、日本独自仕様
・金融資本のグローバル化
 1990年代に通信コスト低減、金融技術発達、規制緩和、会計基準標準化により巨額の金融資本が国際金融市場を動き回る
・今後10年先を見る場合、情報資源のコストは1/100(5年先は1/10)になる。その場合のボトルネックは人間になる。
 既にGUI部分の開発コストは多大で人間に関わる部分がネックになっている。
 ⇒検索エンジンもまだ古い。コンシェルジュ的なUIが必要となるだろう。
・失敗するプロジェクト
 1.最先端の技術を使い、これまで不可能だった新しい機能を実現する
 2.数百の企業が参加するコンソーシャムによって標準化が進められる
 3.政府が研究会などを設け、補助金を出す
 4.メディアが派手に取り上げ、200x年には○兆円市場になるとあおる
・成功する必要条件
 1.要素技術はありふれており、サービスも存在するがうまくいっていない
 2.独立系の企業がオーナーの思い込みで開発し、いきなり商品化する
 3.政府は関心を持たない
 4.最初は話題にならないため市場を独占し、事実上の標準となる
 ⇒iモード、スカイプ、グーグル、iPodなど
・ITは賃金格差を拡大する
 先進国から水平分業で途上国に開発を譲渡した場合、知識労働者の賃金が上がり格差が拡大する。
 ⇒格差が小さい場合、労働生産性に見合った賃金が支払われておらず、その国は成長率が低い(日本)。
 ⇒日本のIT産業は知識労働者が官庁や銀行などの衰退産業に囲われ、イノベーションに対応した産業構造が変化していない。派遣労働者を低賃金で酷使する下請け構造になっていて生産性に応じた賃金が支払われていないため、格差が広がらないが成長もしない。
 ⇒よって格差を埋めるための政府のバラマキ事業は成長産業から衰退産業へ所得を移転し、成長率を低下させ、皆が平等に貧しくなるだけ。
・インターネットによる破壊的イノベーションは、個人が直接グローバルにつながり、全ての個人が対等に競争し、情報処理能力による所得格差が広がる孤独な世界。
 近代社会が生み出した主権国家を溶解し、資本主義をグローバルに分散し、個人は絶対的な孤独にさらされる。


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