レビュー

zooko012
2012年3月読了
中学生の頃、「どくとるマンボウ」シリーズを愛読し、ファンレターまで書こうと思った北杜夫が亡くなった。そのためか長らく絶版であった山岳小説「白きたおやかな嶺」が出版社を変えて再版されたので、早速読んでみた。本書は、北杜夫がドクターとして遠征したヒマラヤ「ディラン」登頂隊を巡る山岳小説・紀行文学である。「文学」であるためか、過度な味付けは廃し、多少冗長なところはあることは否めない。ただ、自然の描写の素晴らしいこと、また、ポーターを含めての遠征隊のやりとりが、ユーモア(この人のユーモアの感覚は大変な好み)をもって人間味をもって描かれており、自分のような素人には、その雰囲気が感じられる点がよい。それにしても、躁鬱病とはいえ、家族(娘はサントリー勤務の窓際OLシリーズの斉藤由香)・仲間に恵まれ、自然を愛し、医師の資格で海や山に出かけてみたいものをみて、最後まで初々しく、敬愛する文学に邁進した北杜夫は幸せな人ではなかろうか(自分の勝手な印象へあるが)。
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