レビュー

zooko012
2011年5月読了
華奢で精巧なガラス玉のような短編集である。大人の世界にとまどいつつ期待を込めながら足を踏み入れる少女、妻の自分に対する愛に確信が持てない夫、ある瞬間にこれまでの人生の意味を突然思い知らされる老人達。1話あたり、5~6頁でしかないものが大部分であるが、一瞬のできごとを丹念に描ききることによって、(醜いものも含めて)そのときどきの言葉にし難い人の思いをあぶり出す。全くもって、名人芸である。3年くらい放置したあげく漸く読んだが、「狐」(山村修)、堀江敏幸(「彼女の背表紙」)が推奨するだけのことはある。最近読んだメイ・サートン(「独り居の日記」)によれば、マンスフィールドは、とても興味深い人物のようなので、評伝などもいずれ読んでみたい。
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