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オリンピックの身代金(下) (角川文庫)

オリンピックの身代金(下) (角川文庫)

奥田 英朗

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レビュー

mak246
mak246
2011年11月読了
盛り上がりに欠けた上巻でのストレスを一気に消化するように、実際のテロを行い日本という国に挑む島崎国男と、それを追い詰める警察たちとで疾走感ある展開が続く!後半に進むにつれハラハラさせられる展開が待っているのだが、決して派手なアクションや奇抜なトリックが仕掛けられてたりする訳ではなく、至って現実的な行動と設定に基づいた物語となっている。
とにかく、島崎の行動理由等に対する説得力を持たせるだけの描写がしっかりなされているし、現実社会での時代背景をキッチリと捉えられてただけに、余計なエッセンスを加えずとも、これだけドキドキ感があって読み応えのある作品に仕上がってるんじゃないだろうか。。。

そして、そのスリルのあるエンターテイメント性と同時に社会派小説としても実に興味深く、面白かった!

自分の知らないこの時代には、現代とは全く違う顔をした東京があって、汗にまみれながらも活気に溢れていたんだろう。
そんな東京オリンピックに立ち会えていたコトが幸せだったのかは分からないけど、それらの活気の礎になった人たちが居た事実と彼らの哀しみは充分に伝わってきた。
「今は多少不公平でも石を高く積み上げる時期なのとちがうか。横に積むのはもう少し先だ」
…村田の言葉にもあったように、哀しみを抱えた礎を元に高く積み上げられた石は、やがて横へとも積まれるようになり、日本は経済大国として成長していくことになる。
だが、礎に胡坐をかいたままでいるうちに、今度は下降を辿り、下り坂の到着地点が見えぬまま転がり続けるのが今の日本。
いつかまた、再び石を積み上げる時が来るのだろうが、新たな礎として国民が担う代償は何なのだろうか?

2020年。もし東京オリンピックが実現するとしたら、その時はまた今と違う東京の顔になってるのだろう。
少なくとも哀しい礎を作らずに実現してもらいたいものだ。。。。

読書ステータス

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